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 クラウドコンピューティング・サービスの多様化・高機能化が進むにつれ、クラウドサービスの利用に積極的なユーザー企業に共通の悩みとして、「クラウドロックイン」という問題が浮上してきた――。最終回は、クラウドサービスのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を共通化しようという動きに迫る。

 クラウドには魅力的な“コンピュータ”があふれている。ユーザー企業は必要な分だけコンピューティングリソースをベンダーから借り受け、月額や年額で料金を支払う。リソースを増減しやすい、ベンダーに運用管理を任せられることなどがメリットだ。

 そうしたサービスの利用を考えるユーザーに共通の悩みとして「クラウドロックイン」が挙げられる。あるベンダーのサービスを利用すると、そのサービスから抜け出せなくなるという問題だ。クラウドを管理するためのAPIが、各社で異なることに起因する。APIを統一することによって、この問題を回避し、もっと自由にクラウドが使えるようになる。

 API統一に正面から取り組んでいるユーザーがリクルートだ。「クラウドサービスは後発なほど利用料金が下がる。毎年でも利用するクラウドベンダーを見直し、最適なものに乗り換えていきたい」(リクルート MIT United プロジェクト推進部 システム基盤推進室の米谷修エグゼクティブマネジャー)。

 この理想を実現しようと、同社はクラウドベンダー23社を一同に集め、選考会を行っている。同社の要件を説明し、各社にクラウドサービスを提案してもらうことが目的だ(図1)。

図1 クラウドベンダー23社にクラウドサービスの提案を依頼したリクルート
図1 クラウドベンダー23社にクラウドサービスの提案を依頼したリクルート
サービスの料金や稼働率に加え、利用可能なAPIも要件に加えた。
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■統一APIで、異なるクラウドを乗り継ぐ

 リクルートがクラウドサービスに移行するのは、本サイトと疎結合にあるサブサイトや、開発環境である。「クラウドサービスで使われているCPUやネットワークのスペックを調べたが、かなり貧弱だった。今、基幹系を乗せるのは無理だし、力技でやるとコストがかかる。クラウドの進化は速いので、利用範囲を少しずつ広げていく」(米谷エグゼクティブマネジャー)という方針だ。

 クラウドベンダーの選考会では、リクルートが求めるIaaS(アイアース)の要件を提案依頼書(RFP)にまとめ、ベンダーに説明した。コストが安いことは当然だったが、信頼性についてはオンプレミス(企業内)環境より低いことを許容した。同社が特にこだわったのは、クラウドベンダーが提供するAPIの種類である。

 クラウドサービスでは、仮想マシンの設定やアプリケーションの導入などに使う、様々なAPIが用意されている。このAPIが共通ならば、異なるクラウドサービスであっても、運用方法を変えずに乗り換えられる。

 現在リクルートは、どこまでのAPIを用意してもらうのか、クラウドベンダーと最終調整に入っている。「例えばAmazonのIaaSにはおよそ200種類のAPIがあるが、本当に必要なのは50~70くらい。あまり無邪気に使いすぎると、APIのロックインに陥ってしまう」( 米谷エグゼクティブマネジャー)。