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 決しておもねることのないエンジニア、渡瀬浩市。その友人である笹波武史は、マネジャーとしての道を選択した。渡瀬の秘書、高杉伊都子は、エンジニアをモデルにした小説を執筆するために笹波にインタビューしたが、マンションの隣室に住む中学生、金田京太郎は、渡瀬に笹波のことを教えてほしいと頼み込んだ。京太郎を可愛がっている渡瀬は、伊都子と京太郎を研究所に招き、講義を始めた。そこに、笹波自身が現れた。

 「ホワイトボードで講義をするのは何年ぶりかな。現場でよく部下には説明したが」

 渡瀬が注いだ紅茶を一口飲むと笹波は黒いマーカーを持って、ホワイトボードに書き始めた。


 LAN(ローカルネットワーク)とWAN(広域ネットワーク)

 「ネットワークといっても、ローカルネットワークは敷地内やビル内などのネットワークを使います。広域のネットワークではNTTなどの市街地回線を使うことになります。それぞれは相当性質が違います。


 パフォーマンスとレスポンス

 「ネットワークの要点は何と言っても、パフォーマンスつまり処理能力とレスポンスつまり応答時間を押さえることです。
 バッチ型(一括処理)のオンラインの場合はそう問題はありませんが、トランザクション処理と言って、入力ごとにその都度処理する場合は、処理時間と応答時間を押さえなければなりません。
 トランザクションのピーク時のトランザクション量を調べて、それを処理できるように回線数や、回線のスピード、コンピュータの能力を決めていきます。この計算のためにシミュレーションプログラムが用意されています」


 待ち行列計算

 「基本となる理論が、待ち行列計算です。これは例えば銀行の支店でATM(現金自動預け払い機)を何台用意したらいいのか、というような場合に使われる計算です」

 「僕のパパ、ぎんが銀行の支店長だから大いに関係ありますね」

 「金田君のお父さんはぎんが銀行の支店長ですか。今話していることはお父さんがまだ若い頃のネットワークの話です。家に帰って話してあげると、きっと懐かしがりますよ。
 昔はまだ処理するコンピュータは1台でしたから、この応答時間が問題になることが多くありました。今はいろいろな処理をサーバーに分けて処理させています。さらには、このサーバーも仮想サーバーになり自動的に負荷分散してくれるようになっています。
 当時は大体、データを入力してエンターキーを押して10秒以内くらいで応答がないとだめだったですが、テスト段階になっても入力して1分も応答がないということがよくありました。これを解消するために遅くなっている原因を調べて解消するのです。これも結構大変な作業でした」

 「エンターキーを押して1分も応答がないなんて僕なんかイライラしちゃうな!」

 「本当ですね。コンピュータは迅速に検索や計算を処理することが当たり前のように思われていますが、便利で迅速なコンピュータになるまでには、多くのエンジニアの方の研究と努力が蓄積されている訳ですね」