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 決しておもねることのないエンジニア、渡瀬浩市。一方で渡瀬の友人、笹波武史は、マネジャーとしての道を選択し、世界的企業の社長にまで上り詰めた。二人の再開のきっかけを作ったのは、ITをテーマにしたビジネス小説を書いた渡瀬の秘書、高杉伊都子だ。渡瀬の研究所を訪れた笹波の講義も終わり、帰ろうとする笹波を渡瀬が呼び止めた。今も研究所にこもり、研究に専念する渡瀬は、企業トップの座にある笹波にあることを託そうとした。渡瀬が託そうとしたものとは。

 秀塾義塾学院大学での高木俊彦の講義に招待された渡瀬、京太郎、私の3人は、大学の正門が面した通りの向かい側にある白壁のお洒落な喫茶店「カンタービレ」で高木社長からガトーショコラとコーヒー、ジュースセットをご馳走になった。その時に私は小説になぜ、高木社長を新選組の近藤勇、金海部長を土方歳三の比喩で例えたのか?その真相を説明した。

 渡瀬研究所を訪問した笹波にも、その理由を聞かれていたので、喫茶店「カンタービレ」で高木社長に説明したことを笹波に話したのである。

 「なるほど、高杉さんが小説に新選組を登場させたのは『剣の強さ』でエンジニアの実力を表現したかったのですか!武士とエンジニアは一見、かけ離れているように思えましたが、そう言われてみると良い表現ですね!」

 笹波武史は感心しながら、何度もうなずいていた。

 「私は剣道二段ですが、北法大学では弓道部の副将をしていましたし、北海道大会では個人で3回優勝しています。弓道の腕前でも『剣の強い仲間』に入れてもらえますか?」

 「もちろんですとも!ですから続編として笹波様の小説を是非、書かせていただきたいと思いまして、こうして取材させていただいているのです」

 「それは本当に光栄なことです!」

 「ワトソンシステム社長としての笹波は有名だが、高杉さんの小説の切り口は決して、ただの英雄伝ではない。高杉さんはこの小説で、一般には理解しがたいテクノロジーやエンジニアの仕事を分かりやすく表しているし、幕末のように時代に翻弄されて我々にも、決して諦めてはいけないことを提言していると俺は思うよ」

 面と向かって渡瀬に誉められたことはなかったが、なぜか妙に私は嬉しかった。

 「僕にとっての笹波さんはやっぱり『ビジコン部隊のエース』だな。同期の長島茂雄さんに似て、ひげ剃りあとが濃い長島二郎さんや『いやいやいや』が口癖の英語が苦手な武市寅雄さん、昔のアイドル歌手の南沙織さんに似ていて、笹波さんの奥さんになった小谷鈴帆さん、イニシャルがY.Yの八代弥生さんの話など『ビジコン部隊』のころの話がとっても面白かった!」

 「あの頃はみんな、若くてコンピュータの仕事をすることがとても新鮮でした。英語が苦手な武市はその後、Y.Yの八代弥生の部下でキャサリンという広報部の女性と付き合い結婚しました。英語の先生は、私からキャサリンの個人教授に変わりましたから、もちろん上達しました。今では立派な営業部長ですよ。長島も相変わらず長島茂雄さんの物まねが顧客に受けて、製品部門の部長をしています。

 鈴帆は私と結婚してから家庭に入り、子供を3人産んで良き母親になり、しっかり家庭を守ってくれています。夏祭りの子供の浴衣は、もちろん鈴帆の手縫いです!八代弥生は今では広報部長として、我が社のイメージ戦略促進に大いに貢献してくれます。八代弥生がいると職場が明るく、快活になります」