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 売り手よし、買い手よし、世間よし――。江戸時代から明治期にかけて、近江商人はこの「三方よし」の理念を掲げて全国を行商して回り、多くの大企業を生み出した。近江商人が担いでいた天秤棒は、小商人時代の初心を忘れず、多くのステークホルダーの間でバランスを取ることの象徴だ。

 企業にとって三方よしの理念は、今なお色あせることはない。儲かる企業の姿を最も端的に表現しているからだ。しかし実現する手法は大きく変わった。天秤棒をITツールに持ち替え、知恵を絞って情報システムを構築することが、現代の企業には求められている。以前は難しかった理念でも、今はITで実現できる。

 顧客のニーズを先回りしてシステムに組み込むことで「買い手よし」を実現し、同時に売上増やコスト削減といった「売り手よし」も達成する。さらに社会にも貢献する仕組みを作り、「世間よし」をも成し遂げる。

 その際に利用するITは、必ずしも最先端のものでなくてもよい。使い方を工夫すれば、身近なITでも、今までになかったサービスを十分に実現できる。

 まずは、高度な次元で三つのバランスを成立させたホンダの取り組みを紹介する。

「カーナビクラウド」で省燃費

 ホンダは2011年にカーナビ戦略を大きく転換した。3月以降新たに発売する全車種で、同社のカーナビ「インターナビ」向け情報配信サービス「インターナビ・リンク プレミアムクラブ」の通信料金を無料にする。有料サービスは2002年に始めており、今後は無料対象車を増やしていく。

 これだけでは、単なるサービス向上策のように聞こえるかもしれない。しかしこの施策には、情報システムを使って「三方よし」を実現するヒントが詰まっている。通信料金の無料化が、「買い手」であるホンダ車ユーザーと「売り手」となるホンダ自身、そして「世間」にどんなメリットをもたらすのか。順番に見ていこう(図1)。

図1●ホンダが実現した「三方よし」
図1●ホンダが実現した「三方よし」
情報システムを賢く使うことで、「売り手」であるホンダと「買い手」であるホンダ車ユーザー、そして「世間」の三者にメリットをもたらした