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 技術者は、顧客や業務部門のマネジメント層から「何を言いたいのか分からない技術屋」と見なされてしまうことがある。一度そう評価されると、その後は蚊帳の外に置かれてしまうので要注意だ。技術者のダメな説明の一つが、「あります/できます説明」と筆者が呼んでいるものである。

 要領を得ない技術者は「こうした機能があります」「こんなことができます」と、淡々と説明することが多い。さらに話だけだと分かりにくいからといって、デモをしても「ここにテキストを入力し…このボタンをクリックすると…こんな結果になります」といった調子である。こうした説明やデモは、聞く側にかなりのストレスを与える。

 ストレスの原因は、「コンテキスト」を与えていないことにある。機能の説明は事実を伝えているにすぎない。製品の機能を評価するには、どのような状況でその機能が使われるのかという背景的な情報(=コンテキスト)が必要である。どんなコンテキストで解釈すればよいのか分からず事実だけを聞かされるので、聞く側はイライラするのだ。

 顧客や業務部門のマネジメント層ともなれば、製品の機能そのものには興味がない。部門の効率化が達成できるのか、企画している新ビジネスに使えるのかが知りたいのである。つまり、訴求すべきは、「業務効率化がこの機能によってこう達成できます」「新ビジネスがこの機能によってこう実現できます」ということだ。

 では、どのようにコンテキストを与えればよいのだろうか。機能の説明やデモの時間は限られているので、ちょっとしたことしかできない。だから、大きなことを伝える中で、その一例を説明したり実演したりするという位置付けにする。ここで大事なことは、説明やデモの前段で、大きなストーリーをしっかりと提示することだ。

 参考になるのが、アニメやドラマのオープニングナレーションだ。短いストーリーの中で話を大きく広げることを意識して作っている。秀逸なのが、筆者が子どもの時にテレビで見た「仮面の忍者赤影」のそれ。「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、琵琶湖の南で金目教という怪しい宗教がはやっていた。それを信じないものは恐ろしいたたりに見舞われるという。その正体は何か?藤吉郎は金目教の秘密を探るため、飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は…『赤影参上!』」。そこから番組が始まる。もう子どもの目はくぎ付けである。

 これを、製品機能の説明(ここでは「一括検索機能」)に適用すると、次のようになる。「今から数年前、スマートフォンが普及する以前、検索機能はあったものの、業務で必要な情報が分散し、ユーザーは煩雑な操作を余儀なくされていた。この煩雑さを回避するために、新しい検索メカニズムを開発した。その機能は…『一括検索』」。そうしてデモを始めるのだ。

 ストーリーは身近で単純な方がよい。ポイントは、大きい課題があり、その解決がいかに困難であったかを経緯として示した上で、説明する機能が決定的な解決策であることを示すところだ。“敵”が強ければ強いほど、最後にちょっと出てくる“ヒーロー”の株は上がる。

 顧客や業務部門のマネジメント層が知りたいのは直面している“敵”を倒せるかであって、“手裏剣”や“刀”の仕様ではない。どんな“敵”をどう倒せるのかを示すことが大切になる。

 ここまで製品機能の説明を例にしてきたが、サービスの特徴を説明するケースなどでも要領は全く同じだ。顧客や業務部門のマネジメント層に聞いてもらえる説明をするには、事実だけでなく解釈のためのコンテキストを与える必要がある。説明やデモを依頼されたときには、参加者はどんな人でどんな課題を持っていそうかを把握した上で、どういうコンテキストを与えるのか、作戦を立てて臨んでほしい。

林 浩一(はやし こういち)
ピースミール・テクノロジー株式会社 代表取締役社長。ウルシステムズ ディレクターを兼務。富士ゼロックス、外資系データベースベンダーを経て現職。オブジェクト指向、XMLデータベース、SOA(Service Oriented Architecture)などに知見を持つITアーキテクトとして、企業への革新的IT導入に取り組む。現在、企業や公共機関のシステム発注側支援コンサルティングに注力