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 テレビ番組を視聴しながらスマートフォンやタブレット端末で関連コンテンツを楽しむ視聴スタイルである「マルチスクリーン」の実現を目指す「マルチスクリーン型放送研究会」(代表:大阪大学情報科学研究科マルチメディア工学専攻応用メディア工学講座教授 下條真司氏、ホームページ)が、2011年12月7日に発足した。朝日放送、関西テレビ放送、TBSテレビ、テレビ大阪、電通、NEC、ネクストウェーブ、博報堂DYメディアパートナーズ、パナソニック、ヴィレッジアイランド、毎日放送、読売テレビ放送の計12社が参加して、今後共同で実証実験などに取り組む。

 一般に、テレビ番組を見ながらスマートフォンやタブレット端末などからTwitterやWebサイトなど通常のネットサービスを使うといったマルチスクリーンの利用は、自然発生的に始まっている。これに対し研究会が目指すのは、放送事業者がIPDC(IP Data Cast)によるマルチスクリーンを意識したコンテンツ提供などにより、マルチスクリーン型視聴に積極的にかかわっていくことで、新しい視聴形態やビジネスモデルを作っていこうという試みである。

 例えば番組で紹介された店舗の情報や料理レシピなどは、現状では視聴者が番組を視聴しながら自らインターネットで検索している。研究会では、テレビで視聴している番組の進行に同期してスマホやタブレット端末の画面に関連コンテンツを自動的に表示することで、手軽に、より深くテレビ番組を楽しめる世界の実現を図る。

 ビジネスモデルとしては、例えばテレビのコマーシャルに連動してセカンドスクリーン側で試供品提供の申し込みができるようなサービスが考えられるという。この場合、放送事業者側は放送側の広告とセカンドスクリーン側のキャンペーンをパッケージ化して広告クライアントに提案できる。スマホなどの双方向機能を組み合わせれば、広告クライアントはテレビコマーシャルだけでは入手できないユーザー情報が手に入るというモデルも考えられる。ユーザーは、事前に登録済みのユーザー情報の提供を承認するだけの手軽な操作で試供品をもらえる。「上手く使えば三方良しのサービスを提供できる」(毎日放送 経営戦略室の齊藤浩史部次長)という。

画面内に情報表示するスマートテレビとの違い

 スマートテレビやネット対応テレビのサービス事例として、放送画面を小さくして空いた画面スペースに情報やアプリ画面を出したり、場合によっては放送画面に重ねて表示するようなものをよく見かける。しかしこうした形のサービスは、放送画面の位置づけを下げる可能性があることから、放送事業者が積極的に支持するのは難しい。「新しい取り組みとして制作部門が関心を持っても、営業部門からは支持されないといったことがあり得る」という。一方で、テレビ画面に直接関連コンテンツを表示させないマルチスクリーン型のサービスは、放送事業者にとって支持しやすい。

 またユーザー側には、個人ごとに持っているスマホやタブレット端末を使うことで、リビングで同じテレビ番組を見ながらも、それぞれの関心に沿った異なる関連コンテンツを利用できるという違いがある。

 研究会では、こうしたサービスを実現するための技術仕様の検討と、具体的なビジネス展開を意識した運用モデル、課題の解決策などについて検討を進める。サービス実現のための技術手段としては、様々なものが考えられるという。端末側が受け取るデータは主に、セカンドスクリーンの振る舞いを記述し、放送内容と同期するために必要となる「構造化データ」と、端末側に表示する画像や動画などの「素材データ」の二種類がある。

 放送番組と端末側のコンテンツを同期させる簡単な方法としては、放送番組の音声を手がかりに番組とコンテンツを同期させ、セカンドスクリーンが表示するデータそのものはインターネットを使って配信する方法が考えられる。一方、放送波でデータを送信するIPDCなどの技術を使ってセカンドスクリーン用のデータをすべて放送で送信する方法や、IPDCで構造化データだけを送信し、素材データはインターネット経由で配信する──などの方法が検討されている。将来的にサービスが広く使われるようになった場合には、「利用者が増えても配信に影響がないIPDCを全面的に利用するのが適している」と考えている。

 研究会では、マルチスクリーンサービスの課題についても議論する。技術面においては、メインストリームと関連コンテンツの同期などのほか「コンテンツ再生環境としてHTML5を意識する」などの課題があるという。また利用環境面では、「著作権」「放送と通信の併用に伴う責任の所在」「サービス主体とサービス責任」「セカンドデバイスの倫理規定」などが課題という。

 研究会では今後、2012年の夏をめどにマルチスクリーン型放送で想定するサービスをデモンストレーションできる実証環境を準備する。これをたたき台として研究会会員企業の技術やサービス、運用などの各担当者に見てもらい、フィードバックを得る方針だ。