PR

 あるプロジェクトのシステムの方式選定で、A案とB案が示された。PM(プロジェクトマネジャー)は「A案で行こう」と決定。それを受けてメンバーは準備に取り掛かった。ところが準備が終わる頃になってPMが「やっぱりB案の方が良い」と急に方針転換。こんな場面に直面したことはないだろうか。

 プロジェクトの最高責任者であるPMの一言は大きく重たい。それにもかかわらず、PMの言動がぶれてしまうようではうまくいくはずのプロジェクトもいかなくなる。PMは言動をぶらしてはいけないのである。

コストと納期優先のプロジェクトに携わったYさんのケース

 Yさんは数年前に大手IT関連企業からSIベンダーA社に転職してきた中堅エンジニアである。転職後はSEとしてプロジェクトに参画。その実力を認められてA社の社内システム開発プロジェクトのPL(プロジェクトリーダー)に任命された。

 そのプロジェクトのPMはYさんの上司であるK部長。システム開発のSEとして、現場叩き上げで部長になった人物で、若い頃から「切れ者」と噂されていた。

 プロジェクトが始まって要件定義フェーズの終盤にさしかかったときのことだ。社内ユーザーから上がってきた要望を全部実現しようとすると、どうしても与えられている予算と工期では不足することが分かった。要求事項を取りまとめていたYさんは、QCD(品質・コスト・納期)のどれを優先すべきか、K部長に相談した。

 するとK部長は間髪入れずにこう言った。「QCDのうち最優先すべきはコスト(Cost)と納期(Delivery)だ。この不景気の中では、少しでも安くシステムを導入することが重要だ。ユーザーからの要望はそのなかで反映してくれ」。

 これに対してYさんは尋ねた。「確かに当社の財務状況を考えればコスト重視はよく分かります。しかし今回の場合、多くのユーザーが利用するシステムです。特に社内的にも声が大きい営業部門のユーザーも含まれています。営業部門の要望だけは、多少コストが上乗せになっても取り入れた方がよいのではないでしょうか」。

 この質問に対してもK部長の答えは明確だった。「多くのユーザーがいれば、それだけ意見が分かれて集約しにくくなる。これらをまともに集約しようとすると多大な時間とコストが必要だ。ここはトップダウンで仕様を決定したほうがいい。その方が、大幅な時間とコストを削減できるはずだ」。

 悩んでいたYさんは、K部長の回答に納得。「これでプロジェクトの進むべき大きな方針が明確になった」と喜んだのだった。A社の経営層もK部長のこの決断を歓迎。プロジェクトはコストと納期優先で一気に進み始めた。限られたコストと納期の中で、一つでも多くユーザーの要望を取り込むように努力した。ただし営業部門の要望だけは、実現するためには大掛かりになるので、取り入れることはできなかった。