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 日本の社会インフラを支える情報システムを、アジア諸国に売り込め――。産業界と官公庁がタッグを組んだ輸出プロジェクトが、相次ぎ動き出した()。販売するのは、航空機の運行管理を支援する航空管制システムと、株式などの売買を担う証券取引関連システムだ。挑戦が成功すれば、国内ITベンダーにとって新たな市場開拓になるだけでなく、インフラ分野でのアジア各国との大規模な提携などにつながる可能性がある。

表●産官連携でアジアへの輸出を狙う情報システムの例
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表●産官連携でアジアへの輸出を狙う情報システムの例

 航空管制システムについては、NTTデータとNEC、東芝、OKIなどが国土交通省と組む。既に輸出のための検討会を始めており、5月までに活動案をとりまとめる。国交省は技術支援の名目で、インドネシアやベトナム、ラオス、カンボジアなどの所管官庁に職員を送り込んでいる。IT各社は、国交省のこうしたパイプを生かし、国内向けに新規構築中の管制システムをアジアに拡販する。

 東南アジアの航空交通輸送量は、2030年まで年平均7%以上で成長する見込み。「LCC(格安航空会社)の普及もあり、アジア各国ともに現行の管制システムの容量が限界に達しつつある」(国土交通省 航空局 交通管制部の井ノ川智史航空管制技術調査官)。システムのリプレース需要が高まるとの判断から、国内ITベンダーが「呉越同舟」で輸出に乗り出す。

 販売するシステムは、航空機の飛行情報管理、レーダー情報処理、管制官向け制御卓といったシステムを含み、1カ国当たり100億~200億円の規模とされる。

 東京証券取引所と大和証券グループ、富士通は金融庁と連携して、ミャンマーを攻める。ミャンマーは証券取引所の新設を目指しており、取引所の売買システムや証券会社の発注システムなどの販売チャンスがあるとみる。東証は2012年2月をメドに、ミャンマー政府機関と資本市場の整備に関する協力の覚書を締結する。

 ミャンマー以外の国にも、高速処理と信頼性を武器に、東証の株式売買システム「arrowhead」を同社と開発元の富士通が売り込んでいる。

 日本にはソフトウエアとハードウエア、システム構築・運用サービスを一体化させた大規模システムの輸出実績がほとんどない。日本独自の仕様にこだわった結果、世界が求める仕様や性能を満たすシステムを構築してこなかった。輸出に向けて複数企業が連携する動きも鈍かった。国内市場にあぐらをかいて、海外展開に本腰を入れてこなかったのが実情だ。重電や建設などの分野に比べて、IT分野の海外進出が遅れている原因も、突き詰めればここにある。

 欧米各国や韓国などは、所管の大臣が新興国政府に情報システムを直接売り込むなど、産官一体となった取り組みで先行する。こうした動きが奏功するのは、売り物があってこそだ。システム輸出の正否は、日本のITベンダーにかかっている。