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 田中淳子氏と芦屋広太氏によるヒューマンスキル往復書簡は第11回を迎えます。「口に出す、言い続ける、材料を用意する」というのは決して難しくないはずなのに、なぜできないのか。芦屋氏はネガティブな気持ちがその要因だと指摘し、「仕事シナリオを書く」という克服法を紹介します。(編集部)

淳子さんへ

 前回の手紙(口に出す、言い続ける、材料を用意する)の中の以下の部分は、非常に大切だと思います。

口に出し、言い続けること、そして、それに関連した資料を用意しておくこと。自分が実現したいことをたぐり寄せるために、この三つが必要だと思います。

 この話を友人や知人にしたところ、「確かに言ってくれないと分からないし、こちらから言わないと相手に伝わらない。コミュニケーションの基本なのに」と多くの人が共感していました。

 私は淳子さんの話をよく知人や友人にします。いつもとても共感してもらえるのですが、今回の話は格別に評判が良かったですね。今までの手紙の中でも、最も琴線に触れる言葉だったのかもしれないと思いました。

 でも…と、ちょっと考えてしまいます。口に出す、言い続ける、関連した資料を用意するというのは、どれもそんなに難しい作業ではないはずです。ところが、なかなかできない。なぜ、できないのだろう、と。

 以前の手紙(正しい「他人の頼り方」 )でお話ししたように、私も若い頃はそういうことができなかった。先輩やメンターに背中を押してもらうことで、やっとできるようになりました。

 自分を変えることができたのは、口に出して、言い続けたからだと思っています。おかげでとても仕事がしやすくなったし、他人との関係もうまく作れるようになった。多くの人にも、同じようになってほしいと思います。

 そのためには、口に出す、言い続ける、そして考えを分かりやすく説明した資料を用意しておくことがなぜできないのかを明らかにする必要があります。そのうえで、どうしたらできるようになるかを考えてみたいと思います。

気持ちをポジティブに切り替えるコツ

 まず、口に出す、言い続けることができない理由を考えてみましょう。私が部下や後輩に尋ねると、以下のような答えが返ってきます。

  1. 言うだけの自信が持てないし、説得する自信もない
  2. 言っても否定されるし、変わらない
  3. 言うとやらされたり、責任を持たされたりする

 どれも、とても後ろ向きな感じがします。1.は知識や説得戦略の不足が原因でしょうし、2.は言う回数や気持ちの入れ方、3.は自主的に行動しようとする意欲がそれぞれ不足しているということです。そのために、気持ちがネガティブになってしまうのだと思います。

 しかし、ネガティブのまま仕事をしても当然、楽しくはありません。考え方のスイッチを切り替えて、ネガティブな気持ちをポジティブで前向きな姿勢にもっていく必要があります。

 では、ポジティブな気持ちは、何から生まれるのでしょうか。私は「自分で制御できる」「自分で考えた」といったことだと考えています。仕事の内容やレベルがどうであれ、「自分で考えた」ことで、「他人からやらされていない」のであれば、人は主体的に行動するものです。

 では、上から仕事が降ってくる場合はどうでしょうか。会社で働いていれば、そのようなことは珍しくありません。この場合は二つの捉え方があります。

 一つは、「上司(他人)からやらされている」という捉え方です。この場合は、気持ちが後ろ向きになり、仕事に対するモチベーションが上がりません。

 もう一つは、「自分で考えてよい範囲の仕事を任せてもらった」という捉え方です。これだと気持ちが前向きになり、自分のできる範囲で工夫できるので、モチベーションも上がります。

 つまり、同じ仕事でも考え方や捉え方をほんの少し変えてみるだけで、その仕事にかかわる気持ちが大きく変わってくるのです。これを積み重ねていくと、5年後、10年後に大きな力量の差となって表れてきます。必要なのは、考え方・捉え方を変えることなのです。