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 今回の投稿は、「プランB」(代替案)に関するもの。事業計画を立てる際には、優先的に取り組むプランAのほか、そのプランがうまくいかなかったときのための「プランB」も用意しておく必要がある。偉大なアントレプレナーたちは、常に代案を探し続けているのだという。(ITpro)

 アントレプレナーと事業執行役員の大きな違いの一つは、アントレプレナーは移り変わる状況に対して、ごく当たり前に素早く対処しますが、事業執行幹部は計画の実行に執着します。世界クラスのアントレプレナーは、この二つの要素をどのように両立できるかを学びます。

「そんな馬鹿な」

 カルフォルニア海岸線保護委員会の聴聞会が終わり、山越えに曲がりくねったレッドウッド・ツリーの中を運転しながら家に帰る途中、ある市長から受け取ったメールのことを考えていました。海岸線保護委員会は、彼が申請した市の土地利用変更に対して、「海岸保護条例を順守していない」と判断し拒否しました。

 私は、彼には気の毒な話だと思いました。というのも、彼はこのプロジェクトをまとめるのに、土地の所有者、建設業者、労働組合、ホテル業者、地域の人たち、市の議会、天候、風速、月の周期、星座占いなどのすべてを取りまとめて計画を提出しました。それは、あたかも猫の群れを囲い込むとか、山の上に水を押し上げるかのような努力でした。

 彼のメールを読んでいて私が同情したのは、顧客、販売チャンネル、製品開発、雇用、取締役会、資金集めなどに置き換えると、スタートアップの典型的な日常と全く同じだったからです。私は彼に非常な親しみを感じましたが、その同情が続いたのも最後のくだりを読むまででした。

「これは大問題です。と言うのは、私たち(編集部注:市長とその関係者)にはプランB(代替案)が無いのです」

プランBがない?

 私は、彼の最後の文章を完全に理解するまでに、メールを2度3度読み返す必要がありました。私は「プランBが無いとは、どう言うことだろう?」と考え続けました。彼からのメールを、元自治体の役人だった海岸線保護委員たちに見せたところ、「プロジェクトを認可してもらうためにはいくらでも代案を準備できたはずだし、今でも巻き返す方法は数案あるだろう」と言いました。

 しかしその市長は、自分の複雑なプランAを推し進めるのにあまりにも一心不乱だったため、プランBという代案が必要かもしれないとは全く考えていなかったのです。

 山道を通り過ぎて緩やかな丘陵に入り、シリコンバレーからすぐ南にある農園地帯を運転しながら、これこそ正にアントレプレナーと事業執行幹部の違いの実例だと納得しました。

プランBは必ずあります

 私のスタートアップ企業の定義は「拡張可能で繰り返しが可能な、ビジネスモデルを探し求めている仮の組織」です。もしあなたがスタートアップ企業を創業したことがあるなら、その定義にかかわらず、スタートアップ企業は本質的に全くの混乱状況にあるのが分かると思います。創業者がその企業を存続させるには、創造的に、そして自主的に考える必要があります。というのは、ほとんどの場合、その事業を取り巻く状況は急速に変化し、当初熟考して創られたプランでもすぐに的外れになるからです。それは、スタートアップに限らず、戦争でも、愛情でも、人生でも同じことです。

 現実に生き残るためには、必要なことと不要なことを見分け、出来上がってきたものを統合し、スタートアップの混乱状況の中に強い意志をもって「秩序の島」を作るといった、心のあり方が求められます。

 これを実行するために、あなたは直観的に複数の仮説を創造し検証します。それらの仮説は、たくさんの可能性のある将来計画を生み出します。そして予想できなかったことが起こり、あなたの仮説のすべてか大部分が間違っていれば、あなたはビジネスプランをピボットして、次のプランを推し進めます。あなたはこれを、拡張可能で繰り返しができるビジネスモデルが見つかるまで続けるのです。

 偉大なアントレプレナーは、プランBを単に持っているだけでなく、常に別のプランを考案し続けます。

学んだこと
―スタートアップとは、当初は繰り返しができかつ拡張ができるビジネスモデルを探し求めることです
―ほとんどの場合、あなたのプランA、B、Cに関する仮説は間違っています
―探求するには、俊敏性、忍耐、立ち直りの早さ、好奇心、機を見る能力、そしてパターン認識力が必要です
―業務の執行には別の才能が必要です。必要に応じて、業務執行幹部を採用する必要があるでしょう
―業務執行幹部は、的を絞って業務を執行することに秀でています
―世界レベルのハイテク分野のCEOであるビル・ゲイツ氏、スティーブ・ジョブズ氏、ラリー・エリソン氏、ジェフ・ベゾス氏、ラリー・ページ氏といった人たちは、探し求めることと執行することをどのように統合するかを学んだのです

2011年8月15日投稿、翻訳:山本雄洋、木村寛子)

スティーブ・ブランク
スティーブ・ブランク  シリコンバレーで8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事し、現在はカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などの大学および大学院でアントレプレナーシップを教える。ここ数年は、顧客開発モデルに基づいたブログをほぼ毎週1回のペースで更新、多くの起業家やベンチャーキャピタリストの拠り所になっている。
 著書に、スタートアップ企業を構築するための「The Four Steps to the Epiphany」(邦題「アントレプレナーの教科書新規事業を成功させる4つのステップ」、2009年5月、翔泳社発行)がある。