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 現在、企業変革のリーダーとして部長が活躍している日本企業がどれほどあるだろう。かつては「変革ミドル」が日本的経営の強さを支えていたのに、なぜ姿を消してしまったのか。本書は、日本企業が強くなるために部長の復権を訴える好著である。

 ここでいう「部長」とは、現場のトップかつ経営のボトムに位置する事業部長や工場長も含めた、上級管理職全般を指す。本書は、バブル経済崩壊以降に行き過ぎた成果主義や効率主義が浸透し、部長職が機能不全に陥っていると指摘する。だが、効率追求や計画達成では今日の混沌とした経営環境は生き抜けない。事業変革こそが企業に必要だとの主張を展開する。

 その要になるのが部長である。具体的には、経営者層と部長、さらに部長同士が連携した「戦略的経営チーム」を作ることを提案する。部長はタテヨコ連携という新しい機能を担うことになる。

 なぜ部長なのか。部長職は、経営者層が担う戦略や方針など「理想の世界」と、その実行を受け持つ現場が直面する「現実の世界」との結節点に位置する。そこは理想と現実がぶつかり合う「矛盾のたまり場」であり、この矛盾こそが変革の種だからである。

 書籍の中盤からは、戦略的経営チームの概念と四つの実行機能を解説する。概念説明に加えて、著者が実際に変革活動に参画した四つの事例を物語仕立てで紹介している。読み進むにつれて「概念」や「実行機能」の意味と意義が実感できる構成になっている。

 事例からは、幾多の困難に立ち向かった部長やチームメンバーらの苦労、困難を乗り越え変革を達成した喜びが伝わってくる。プロジェクト発足時の迷走から抜け出すための工夫や壁にぶつかったときの対処法などが、実際の会話を交えて生々しく語られる。自社の状況と照らし合わせれば、変革を推進するための処方箋が浮かび上がってくるはずだ。

 評論家的なビジネス書とは一線を画すリアリティーに富んだ、読んでいて元気が出る一冊だ。

評者 内山 悟志
大手外資系企業などを経て、1994年にアイ・ティ・アールを設立し、代表取締役社長に就任。ユーザー企業にIT戦略の立案などをアドバイスする。
経営チーム革命 Lite

経営チーム革命
長野 恭彦著
日本経済新聞出版社発行
1890円(税込)