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有限責任 あずさ監査法人
建設・不動産業ワーキンググループ
マネジャー 公認会計士
伊藤 憲史

 本連載は、日本企業がIFRS(国際会計基準)を導入する際の留意点からIFRSによるインパクト全般までを主要な業種別に見ていくことを目的としている。前回は医薬品業におけるIFRS導入のポイントを説明した。今回は不動産業を取り上げる。

 不動産業の業態は、主に(1)不動産管理・賃貸、(2)不動産開発(デベロッパー業)、(3)不動産流通(仲介)、(4)不動産ファンド---の4種類に区分される。

 不動産業では、保有する自己使用不動産、賃貸用不動産、開発用不動産、販売用不動産などを、どのように有効活用するかが重要な経営課題になる。これらの不動産の期末評価額によって業績指標が変動することになるため、投資の目的で所有する不動産の会計処理はIFRS導入時の重要な論点である。

 また、いわゆる不動産ファンドビジネスでは、特別目的事業体(SPE:Special Purpose Entity)を連結の範囲に含めるかどうかによって業績指標が変動するため、連結に関する論点もIFRS導入時のポイントになる。

 加えて、IFRSでは現在、新しいリース会計基準が検討されており、2012年上半期中には再公開草案が公表される予定である。リース基準の見直しは不動産ビジネスにも大きな影響を与える可能性があるため、今後の動向を注視する必要がある。

 以下では、不動産業がIFRSを導入する場合に留意すべき上記3つの重要な論点に沿って、その内容と、財務数値や企業経営および業務プロセスやITシステムにどのような影響を及ぼすかを解説する。

投資目的で所有する不動産の会計処理

 日本の企業会計基準(日本基準)では、投資目的で保有される不動産は、自己使用される有形固定資産と同様に、取得価額から減価償却累計額と減損損失累計額を控除した価額で計上する。同時に、投資の目的で所有する不動産、将来の使用が見込まれていない遊休不動産、およびその他賃貸されている不動産などの「賃貸等不動産」の定義に該当する資産については、2010年3月期からは時価の開示が求められている。

 この時価開示の適用により、投資の目的で所有する不動産に関連する日本基準の規定は、IFRSの原価モデル(表1)を採用した場合とほぼ等しくなったと言われている。ただし、IFRSの基準であるIAS第40号第5項が規定する「投資不動産」と、日本基準で時価開示が求められるようになった「賃貸等不動産」の定義には、一部に相違が存在する。

表1●IFRSには投資不動産の測定方法が2種類ある
  原価モデル 公正価値モデル
会計処理 取得原価を耐用年数にわたり減価償却し、減損会計が適用される 毎期、公正価値評価し評価損益を計上する
開示 公正価値モデルで求められる開示に加えて、原価モデルでは減価償却方法、耐用年数、減価償却率などの開示、および公正価値の開示も求められる 投資不動産の期首と期末の帳簿価額の増減内訳を示す調整表など、日本基準で要求されている以上の詳細な開示が求められる

 また、時価(公正価値)の算定方法についても、日本基準における時価開示では重要性などにより簡便な算定方法が認められているが、これに対応する記述はIFRSには存在しない。このため、不動産業を営む会社の場合には、日本基準とIFRSで重要な金額の差が生じる可能性があるので注意が必要である。