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 今年も1月初旬に米国ラスベガスの国際家電見本市(CES)に行ってきた。このコラムでは毎年、CESをネタに書いてきた。毎年同じ時期に同じ行動を取ることのメリットは、「定点観測」できることだ。日々、忙しく仕事をしていると、物事の変化がいつ起こり、それが仕事や生活にどんな影響を及ぼしたのか、あまり考えることなく月日が過ぎてしまう。

 今回は、2008年から2012年まで5回のCES視察の出張において、筆者の持ち物や通信環境を振り返って、変化を観察してみようと思う。

 今から4年前の2008年は、ノートPCとデジカメ、NTTドコモの携帯電話を持参した。通信環境はホテルでは有料の有線LANを利用。料金は1日15ドル前後で、日曜日はつながないようにするなど節約したものだ。空港での無線LANサービスも有料で、接続手続きも面倒なので利用したことがなかった。この年はBill Gates氏が最後の基調講演を行った年でもある。

 翌年の2009年は筆者の持ち物、通信環境ともにほとんど変化はなかった。2010年になると、現地ではiPhoneやBlackBerryの利用者がにわかに目立つようになってきた。しかし、新しいものにはすぐに飛びつかず、一呼吸おいてから購入する筆者の出張持参品には変化がなかった。また、ホテルのインターネットサービスはまだ1日15ドルの有線LANのままであった。

 これが2011年になると、持ち物にiPhone 3Gが加わることになる。ノートPC、デジカメ、携帯電話は相変わらず持参したのであるが、デジカメ以外の二つはほとんど使うことがなかった。理由は無料のWi-Fiスポットがあちらこちらにできたからである。通信費を節約するためにiPhone 3Gを持ってホテルのロビーや無料Wi-Fiサービスを提供する店などに行くことで事足りるようになった。空港も無料Wi-Fiとなった。ホテルの室内は無線化されたが、しかしまだ有料であった。

 今年は大きな変化が起こった。まず、筆者の持参品が大きく変わった。iPad 2、iPhone 4S、携帯電話となり、これまで必ず持参したノートPCとデジカメが不要になったのである。荷物のかさばりと重量という観点からするとこれは画期的な変化である。写真はすべてiPhone 4Sで撮影し、動画も撮った。また、ホテルの室内無線インターネットサービスも無料となり、メール送受信のためわざわざ外出する必要がなくなったのは大きい。

 さらに、2011年はメールやTwitterで送った写真も、2012年はFacebookが送り先となった。送信すると、たちまち友人たちからコメントや「いいね」をもらえるのである。携帯電話は一度も使うことがなかった。来年は持参する必要がないだろう。ちなみに今年は、米Microsoftが今回を最後にCESから撤退するとアナウンスがあった。

 改めて振り返ってみると、この4年間にいろいろな変化があったことに気付き、興味深い。ノートPCとデジカメ、携帯電話という出張道具の「3種の神器」がタブレット端末とスマートフォンにリアルに置き換わった。以前はメールだけチェックしていたが、今はまずFacebookを見る。人でいえばBill Gates氏はIT業界をリタイアし、Steve Jobs氏はこの世にいない。

 筆者は2008年に「CESで語られ展示されている技術は、5年先、10年先には確実にITエンジニアの仕事や生活に変化をもたらすはずだ」と書いた。筆者自身は今回振り返ってみて、大きな変化があったことに改めて気が付き、新鮮な驚きがあった。

 筆者にとってこの気付きの大きな効用は、IT業界で働く素晴らしさを再認識するとともに、将来を予測する材料を得られることだ。当たっても外れても、自分なりの仮説を持って技術動向を見ていくことは面白いし、感性を養うことになると思っている。

 さて、5年後はいったいどうなっているのだろうか。楽しみである。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「事例で学ぶRFP作成術実践マニュアル」「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)、