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 本連載は、2010年7月から日経情報ストラテジーに掲載されたものです。2012年の現在でも通用するヒントを含んでいるため転載します。

 Twitterなどソーシャルメディア活用の大事な心構えはおよそ10年前の本に書かれている─。こう言うとけげんな顔をされるかもしれないが、ネットマーケティングで成果を上げようと血眼になっている方々にぜひお薦めしたい本がある。

 「バイラルマーケティング」という言葉を覚えておられるだろうか?

 10年近く前に元・米ヤフー副社長のセス・ゴーディン氏が書いた同名の著書(翔泳社刊、2001年出版)は、なぜHotmail(ホットメール)が急速に普及したのかなどのエピソードを紹介し、注目を集めた。絶版になってはいるが、ネット通販で古書を入手するのは難しくないだろう。

 当時、本書を気に留めなかった若い人たちのために簡単に内容を紹介すると、急速に普及したインターネットを使って、口コミを「バイラル」、すなわちウイルスのように素早く、広範に拡散させるマーケティング手法を紹介した書籍である。

 本書でゴーディン氏が指摘した重要な概念が「アイデアウイルス」というもの。すなわち「商品やサービスに、人々が他人に教えたり薦めたりしたくなる『何か』が備わっているか」である。新鮮な驚きをもたらす機能、好感を持たれるデザイン、心地よいサービスといったものだ。そうした点が備わっていない商品は、人々の間でウイルスのように拡散する力が乏しいため、ネットで懸命に宣伝しても効果は小さい。

 今でもゴーディン氏は、米ヤフーのウェブサイトで次のように言っている。「自分の親しい知人や友人を10人選んで、あなたの商品やサービスについて話してみなさい。もし、その話を10人がほかの誰にも広めようとしないなら、その商品やサービスは、どんなに広告費をかけても人々の間に広まることはない」

 この「最初の10人の壁」を運良く乗り越えることができた商品について、ネットマーケティング手法やTwitter、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを活用すれば、拡散のスピードを速めることができる。壁を迂回させるために使えるわけではない。

 こう考えていくと、ツイッターのフォロワー数を増やすことだけに血道を上げることが、いかに的外れかということが見えてくる。

 今日、ホットなテーマとなっているソーシャルメディアのマーケティング活用も、基本的に目指すところは同じである。そして世界中のマーケッターは、Twitterや、SNSの米フェースブックなど、かつてないスピードでウイルスを媒介する力を持ったツールの活用方法について、日夜、アイデアを絞り出している。

 読書の秋。「バイラルマーケティング」をもう一度読み返してみてはいかがだろうか。

泉 浩人(いずみ ひろと)氏
ルグラン代表取締役
泉 浩人(いずみ ひろと)氏 慶應義塾大学経済学部卒。米ジョージタウン大学MBA。三井銀行(当時)、米オーバーチュア(同)を経て、2006年にデジタルマーケティングに特化したコンサルティング型代理店ルグラン(www.LeGrand.jp)を設立。著書に「SEM成功の法則」(ソーテック社刊)、「クリック!指先が引き寄せるメガチャンス」(監訳・イーストプレス刊)など。