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 日本では多数ある有料専門チャンネルをパッケージ化して売るスタイルがスタンダードと考えられてきた。いわゆるベーシックパッケージと呼ばれるものである。

 ベーシックパッケージは、プラットフォーム側が用意した多種多様なジャンルのチャンネルの集合体になっている。加入世帯が全チャンネルを視聴することは想定しておらず、パッケージの中から幾つかお気に入りのチャンネルを見つけてくれれば良いというのが、その発想の原点である。個々の加入者が視聴したいチャンネルを選べるようにした方が効率的に見えるが、パッケージを用意する側としては、その方がコスト増になってしまう。最も安価で提供できる仕組みとして、ベーシックパッケージが組成され、加入世帯として見たくないチャンネルは見なければ良いという組み立てだ。

 一般にケーブルテレビやIPTVでは、各ジャンルをカバーした形の総合編成的なパッケージが売られている。旧来のBS放送の有料チャンネルに代表されるようにオプションとかプレミアムと呼ばれるチャンネルと契約するには、ベーシックパッケージの購入が前提条件になっているケースが大半である。一方でスカパーを直接受信する世帯では、単チャンネル契約することができる。また「プロ野球セット」に代表されるように、自分の見たいジャンルに特化したパッケージを買うこともできる。

 2011年のアナログ停波を契機として、多チャンネルの加入世帯側にも大きくニーズが変わり始めた様子が窺える。震災の影響も大きいし、デジタル化対応でケーブルテレビの加入世帯が増えたこともあり、見るわけでもないチャンネルがセットで売られることに対し抵抗感が起こり始めたことも事実である。総合編成的なパッケージは、視聴者が多チャンネル放送に不慣れな時期には確かにユーザーフレンドリーな面も見られた。パッケージ化されたチャンネルをザッピング視聴しているうちに知らなかった面白いチャンネルと出会う契機になったからである。しかし、有料専門多チャンネル放送が登場してから、もうすぐ20年を迎えようという今、加入世帯からすれば、要らないチャンネルは要らないし、専門的なことは分からないが、要らないチャンネルがセットになっているから安価で済んでいることに納得がいかないという声が強まってきた。

風化し始めた総合編成的パッケージ

 総合編成的なパッケージが曲がり角を迎えつつあることに拍車をかけることになったのが、地デジ化に合わせてテレビを買い替える際にスタンダードとなった3波共用機である。単品買いのできなかったチャンネルも、直接受信に切り替えれば単品で買えるようになった。新BSや110度CSのHDTV化を進めるチャンネルは、費用対効果を検証して、十分にメリットが見込めると判断されただけに、有力なチャンネルが多いという事情もある。

 ケーブルテレビやIPTVの事業者も、総合編成的なパッケージだけを売っていると、ユーザーニーズにそぐわなくなってくることを意識し始めているので、加入世帯から人気の高いチャンネルを中心としたパッケージに切り替えようという動きも見られ始めた。おそらく、この傾向は拡大することはあっても、元に戻ることはなさそうである。

 日本では、世界的に有名なチャンネルも、あまり評価されないという指摘があり、ユーザーの好みに合わせたパッケージが主力になると、いよいよ見られなくなってしまうという声も聞く。しかし、言語や文化の違いを考えれば、どれだけ世界で売れようとも、日本で売れないチャンネルが出てきて当然である。それをパッケージ化されることで解消しようという発想が間違いであり、日本の視聴者に向けたアピールポイントを増やす努力をすべきである。日本で受け入れられない本当の理由を解消しようとせず、ケーブルテレビやIPTVのようなネットワーク事業者に対し、ただパッケージ化されるように働きかけているチャンネルが外されていくのは当然のことなのかもしれない。

 その最大の理由は営業する相手を間違えているからである。営業する相手は、常に視聴者であるべきであり、ネットワーク事業者ではない。そこに気付かないチャンネルが淘汰されるのは当然であり、多チャンネルベーシックについての考え方もそれを後押しすべく曲がり角を迎えているということなのではなかろうか。もはや総合編成的なパッケージは終焉に向かうことになるだろう。