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 先週、世界最大といわれる深センの携帯電話街「華強北路」に行ってみた。あるわあるわ、見渡す限り携帯電話や家電の店舗が軒を連ねており、平日の夕方にも関わらず人でごった返している。

  通りは、深セン繁華街の華強北路両側に面していて綺麗に舗装されていた。中国の主要都市では、地下鉄工事が盛んに行われていて、至るところで道路が掘り返されている。何と今年中に地下鉄を11本程開通させるのだとか。こちらでは、開通の速度に地図の更新が間に合わないという珍しい事態が発生している。Google mapさえも追いつけない。そんなわけで、地元の人同士が「もう開通した」「いや開通していない」と言い争っていたりする。それほど中国の変化は激しいのである。

 人の変化も激しい。最近気づいたのだが、唾を吐く人は極端に減り、ちゃんと行列に並ぶ人がすごく増えた。4~5年前とは大違いである。深センでは、ユニバーシアードの開催が予定されているので、当局が厳しく市民を指導、監視しているらしい。

利用者はお咎めなし

 ただ、偽物の横行ぶりは健在である。携帯電話街でも、本物に混じって多量の偽物が売られている。いや偽物に混じって少量の本物が売られている、と言った方が正しいだろう。NokiaならぬNokai、SonyのようだがSomy、iphoneではなくephone・・・。そんなわけで、現地の人たちはこの街を深センの「偽的東西(ジャーダトンシー)=偽物市場」と呼ぶ。

 面白いのは、偽物は偽物として売られていることだ。現地の人に偽物を本物と偽って売ると、後で仕返しされるからだとか。偽物市場にも掟や秩序はあるらしい。そして、同じようなソニー・エリクソン(風?)の携帯電話が50元(約600円)から5000元(約6万円)で売られている。私にはどれも同じに見えて違いが分からない。そこで中国のパートナーに相談してみると、「使えるなら安い方がいいんじゃない?正規品を買ってもどうせ1年でバージョンアップするんだし」とのことだった。日本だと偽物を使うことにある種の後ろめたさを感じるけど、こちらではそれは全くないようだ。実際、中国の法律では、偽物を製造、販売した人はもちろん有罪だが、利用者はお咎めなしなのだという。

 偽物を求めるのは現地の人ばかりではない。目立つのはアフリカ人の姿だ。聞くと、ここで携帯電話を仕入れて持ち帰り、母国で売るのだそうだ。母国ではブランド名にくわしい人は皆無だから、安ければ本物でも偽物でも全くかまわないのだという。こうした需要がある限り、偽物はなくならないのだろう。

「けしからん」では解決しない

  ただ、そんな偽物も安さだけで競っているわけではなさそうだ。実際、うなるような工夫が盛り込まれていたりする。ブランド名やデザインは「パクり」でも、中身は立派にオリジナルだったりするのだ。私が一番欲しかったのは、プロジェクター付きの携帯電話。ちゃんと使えるものならぜひ買ってみたい。ほかに、ペンシル型携帯や髭剃り付携帯などというものまである。まさしくイノベーションだ。

 そうであれば、デザインやブランド名を似せたりせずに、堂々と自社ブランドで売ればいいのにと、ふと思う。つまり、中国は「真似方」を間違っているのではないかと。

 そもそも進んだ製品や売れている商品をお手本にし、それを模倣することは、長い歴史を通じて世界中で営々と続けられてきたことだ。日本市場でも、ある製品がヒットすれば、すぐに似たような製品が登場する。中国のようにブランド名もデザインも「もろパクり」ということはさすがにないけれど。

こんなジョークがある。
「中国は日本の真似ばかりする。これまで不法に真似てきた技術を全て返してもらおう」と日本人が言うと、中国人曰く「では、漢字を全て中国に返してもらおう」と。

  要するに、いくら「けしからん」と言っても偽物の問題は解決しないということだ。模倣行為を非難するより現実的に、真似られないモノを開発するか、真似られる前に投資資金を回収するスキームを考えるべきだと思う。

 その方法の一つとして、中国企業と提携して日本側が先に開発費用をもらってしまうという仕組みがある。このスキームが成立すれば、提携先の中国企業は何とかして真似られないよう、真似られる前に投資を回収するよう努力するだろう。実際に、そのような投資スキームを採用する企業も現れ始めた。欧米系の企業に多いようだ。ところが多くの日本企業は、「市場開拓は自力で」という自前主義が強く、このような仕組みをなかなか導入しようとはしない。

 こうした自前主義の企業が失敗すると、ときとして「それはあの国がおかしいからだ」と言い訳したりする。けれども、それはお門違いというものだろう。なぜなら中国企業ですら、自社製品の模造品に手を焼いているのだから。

本稿は、中国ビジネス専門メルマガ『ChiBiz Inside』(隔週刊)で配信したものです。ChiBiz Insideのお申し込み(無料)はこちらから。
山田 太郎(やまだ・たろう)
株式会社ユアロップ 代表取締役社長
1967年生まれ。慶応義塾大学 経済学部経済学科卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て、2000年にネクステック株式会社(2005年に東証マザース上場)設立、200以上の企業の業務改革やIT導入プロジェクトを指揮する。2011年株式会社ユアロップの代表取締役に就任、日本の技術系企業の海外進出を支援するサービスを展開。本記事を連載している、中国のビジネスの今を伝えるメールマガジン『ChiBiz Inside』(発行:日経BPコンサルティング)では編集長を務める。