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 一般にプロジェクトとは、「独自の成果物(またはサービス)を創出するための期限のある活動」を指す。ルーチンワークさえこなせばよしとされる職務を例外として、多くのビジネスパーソンが、1度は何らかの「プロジェクト」に関わったことがあるはずだ。

 そもそもIT業界や土木・建築業界では、大半の仕事がプロジェクトの形で回っているともいえる。そのほかの業種でもプロジェクトは珍しくない。新店舗や新商品などを開発することも、コンペなどに参加して勝利を得ようとすることも、被災地で期限を明確にして復旧/復興を図ることも、一種のプロジェクトである。

 広義に解釈すれば、家族で手分けして家財を整理して引っ越すこともプロジェクトの一種と捉えられる。こう考えれば、プロジェクト管理のノウハウはビジネスパーソンだけのものではない。

 これほど関わりの多いキーワードであるにもかかわらず、プロジェクト管理の行動特性(コンピテンシー)は、なかなか身につけることが難しく、また、教えることも難しいもののようだ。実際、筆者はIT業界関係者から「プロジェクトマネジャーになりたがらない技術者が増えている」という話をこれまで何度も聞いた。

 また、書籍通販大手アマゾンのサイトで「プロジェクト管理」と検索すると百数十冊もの書籍が表示されるが、辛口の評点がつけられている書籍は意外なほど少ないことも興味深い。ノウハウを求めてやまない人が多いことを象徴しているように思える。

5年ほど前から徐々に国内事例が出てきた

 この、「体系的なプロジェクト管理ノウハウの確立」という難題に挑戦した識者の1人が、『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』(ダイヤモンド社)の著作で知られるTOC(制約条件の理論)の提唱者、エリヤフ・ゴールドラット博士(故人)だった。

 同博士が1997年に著した『Critical Chain』の邦訳『クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』(ダイヤモンド社)が出版されたのは2003年。本書をきっかけに「CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」が国内でも知られるようになり、5年ほど前から徐々に事例情報が出てきた。

 日経BP社の媒体における初期の報道では、日経情報ストラテジー2005年8月号や日経コンストラクション2007年6月8日号が北海道奈井江町の建設会社である砂子組の取り組み事例を紹介した。IT業界関連では日経SYSTEMS2007年1月号が、受託開発を手掛けるシンプルシステムズの事例を掲載した。2010年には日経コンピュータが7月21日号と8月18日号でNTTデータがCCPMに取り組み始めたことを報じた。

 上に挙げた事例についてITproで閲覧できるものは残念ながら見当たらなかったが、2008年頃から日経情報ストラテジーではそのほかの事例を幾つかITpro上で報道している。また、ITproでも独自に、2011年に大和ハウス工業と富士通グループ会社がERP(統合基幹業務システム)プロジェクトに適用開始した事例を短期連載で解説した。NTTデータの最新のCCPM適用状況も報道している。

マネジメント層の意識改革を重視する傾向に

 筆者の取材活動を通しての印象では、コンサルタントや実践者のコメントはこの5年間で、徐々にトーンが変化してきた。5年ほど前の普及初期には「工期を意図的に短く設定することと、マルチタスクを無くすことによって、現場のモチベーションや集中力を高められる」という側面を重視して語られることが多かった。

 例えば「『学生シンドローム』や『パーキンソンの法則』の抑制に効果的」といったものだ。前者は、夏休み最後の日にならないと宿題に手をつけない心理を言い表したもの。後者は、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソン氏が唱えた、利用できる時間をすべて埋めるように仕事を拡大させてしまうという現象を指している。

 しかし今は「現場の状況を見える化できることで、抜本的な対策をマネジメント層が打ち出しやすくなる。チーム間のリソース(人員数)調整や、開発仕様のシンプル化といった対処をマネジメント層が迅速に打ち出すことができてこそのCCPMだ」というトーンとなってきている。

 ゴールドラット・コンサルティング ディレクターの岸良裕司氏は最近、筆者に「日本企業の現場は既に真面目で精一杯頑張っているところが多い。プロジェクト遅れが頻発している日本企業で変わらないといけないのはマネジメント層だ」と語った。この岸良氏の最新のインタビュー記事は、大和ハウス工業と富士通グループ会社の事例を詳しく取り上げた「実践!CCPMで工期3割短縮」の最後(第3回)に掲載した。マネジメント層でこうした認識が進んでいけば、要件定義や概要設計など上流工程でもCCPMで成果を上げた事例が増えてくるかもしれない。

IT業界における事例情報や提言

「CCPMのプロジェクト実績は50件弱、平均2割の短縮効果」NTTデータ

実践!CCPMで工期3割短縮(1)3割減の工期で「いつもの疲弊が無い」

実践!CCPMで工期3割短縮(2)工期短縮を支える現場マネジメントとは

実践!CCPMで工期3割短縮(3)成功理由から横展開の課題も見えてきた

『ザ・ゴール』流で期間短縮 大和ハウス工業 石橋民生 代表取締役副社長

目指せ!残業ゼロの現場 バッファの取り方で残業は必ず削減できる

その他業界での事例情報

日本特殊陶業 納期を最大83%短縮

オリンパスイメージング デジカメの設計部門にCCPMを採用

国土交通省中部地方整備局 工期を半減して工事費削減

用語解説

知っておきたいIT経営用語 CCPM