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 プロジェクト管理における計画書を作成し、それに則ってプロジェクトを進める――。これがPMOの一つの役割である。しかし、プロジェクトの規模を考えずに同じことをやって、本当にうまくいくだろうか。人数に対して管理工数が重くなれば、スピードが求められる小規模プロジェクトは潰れてしまう。小規模プロジェクトでは、個別のプロジェクトに合わせた管理方法の検討が特に重要になっている。

小林 慶志郎
マネジメントソリューションズ 中小企業診断士


 前回、小規模プロジェクトでのPMOの活用について述べましたが、中~小規模プロジェクトに参画すると、プロジェクト管理がうまく適用されていないケースが多く見られます。「規模が小さいから」とか、「人数が少ないから把握できる」といった理由をこじ付けて、あらゆる管理をないがしろにしている場合が多いのではないでしょうか。

 こういったプロジェクトでは確かに目先の状況は把握できているのですが、先のフェーズのことまで考慮して本当にプロジェクト全体を把握できているケースはあまりありません。そのため、PMOとしてプロジェクトに参画すると、まずは状況を見える化して先のフェーズまで含めた情報収集を開始することになるでしょう。

 もちろん、その動き自体は間違っていません。ですが、その方法と、力の入れ具合には注意が必要となります。プロジェクトの特徴や事情、人数や文化に合わせた管理を導入していく必要があるのです。

ルールは存在に意味があるのではない

 ここで、私の経験を紹介します。40人月程度の小~中規模プロジェクトでの話です。テストフェーズでプロジェクトが混乱しており、その立て直しのために参画しました。まず、そのプロジェクトで作成していた資料を見てみると、前任者によってテスト計画書がしっかりと作成されていました。その内容も非常に充実したものでした。

 しかし、現場ではこの計画書の内容がまったく守られていませんでした。なぜかというと、その理由は次のようなものでした。

(1)このチームでは実施したことがないほどの「必要以上に詳細な管理項目」が設定されている。
(2)テスト計画書が40ページにもわたる資料で、とてもメンバーが気軽に参照できない。
(3)ルールが詳細に規定されすぎていて、ルールから外れてしまった時(混乱状態)に対応できない。
(4)そもそもメンバーへのテスト計画書の説明が足りない。

 前任者の作成したテスト計画書に書いてあることは間違っていません。大規模プロジェクトだったら、そういう管理が必要になったでしょう。ですが、その時のプロジェクトチームにはまったく適合していませんでした。私は参画してすぐに、「メンバーが一目で見て分かるレベル」まで情報をそぎ落とした資料を作成し、メンバーに配りました。それにより、プロジェクトは少しずつ混乱から抜け出し、ゴールに向けて動き始めました。

身の丈に合わない管理は撤廃するべし

 上記は、管理の枠組みはしっかりできているにも関わらず、うまく運用できなかった事例です。このチームの中核メンバーには、冒頭で挙げた「人数が少ないから把握できる」という文化が根付いていました。メンバーを増やしてやや規模が大きくなっても、同様の管理レベルで対応しようとして、苦しんでいました。そこで、前任者はしっかりとした計画書を作成し、チームをコントロールしようとしたわけです。しかし、これは定着するどころか逆に混乱を招いてしまいました。

 この管理方法は、10人に満たないプロジェクトメンバーからすると、「なぜここまで必要なのか理解できない」ものだったと言えるでしょう。もちろん、説明が足りないことも大きな原因の一つです。加えて、取得したい情報、管理したい内容が、規模に対して過剰だったのです。

 どんなプロジェクトでも同じですが、過去の経験やPMBOKなどの知識にとらわれずに、本当に必要な情報だけを収集する仕組みを考える必要があります。