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 「自立回復は待てない。エースを送り込み、本社主導で大胆に立て直す」―。歴代の日本IBM社長に比べ就任期間が短期かつ突然のトップ交代には、米IBMの決意が見える。日本IBMは2012年3月30日、米IBMのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントのマーティン・イェッター氏が同年5月15日付で社長に就任すると発表した(写真)。

写真●記者会見した、日本IBMの次期社長に就任する米IBMのマーティン・イェッター氏(右)と、日本IBMの橋本孝之社長
(写真:都築 雅人)
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 背景にあるのが、日本IBMの業績低迷。2010年12月期の売上高は約9378億円で、最盛期の6割程度まで縮んだ。橋本社長就任後は12四半期連続で売上高が一度もプラスに転じなかった。

 国内のIT業界には「日本での売り上げ拡大はあきらめ、リストラで利益確保を目指す」と見る向きもあるが、日本IBM社内から「米本社は日本での成長をまだ目指す」との声が上がる。その根拠はイェッター氏が単なるコストカッターではなく、「コーポレート・ストラテジー担当」という本社中枢部門で全社の経営戦略策定を手掛ける「エース中のエース」(IBM関係者)であることだ。

 イェッター氏は日本と市場環境が似るドイツIBMの社長を2006年から2011年まで務め、米国、日本に次ぐ売り上げ規模だが、不振が続いた同社の業績を建て直した実績を持つ。「組織変革やクラウド事業の立ち上げで近代的な会社に変えた」(イェッター氏)。コスト削減だけでなく成長戦略も打ち出し、ドイツでの成功モデルを世界のIBMに広めた。

 これらの成果が認められ、イェッター氏は2011年に米本社のコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントに抜擢。今年1月に米IBMの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したバージニア・ロメッティ氏が日本に送り込んだ格好だ。

 イェッター氏の経歴と実績からすると、コスト削減を進める一方で、IBMの強みを生かせる企業のグローバル化支援事業の強化などで売り上げ拡大を目指す「攻め」の姿勢を打ち出すのは既定路線とも言える。今年6月に創立75周年を迎える日本IBMが、56年ぶりの外国人社長の下で復活できるか。イェッター氏の采配とともに、独自路線と決別しグローバル企業としての一体運営を受け入れる日本IBM自体の変革も求められそうだ。