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 プロジェクトを失敗しないための秘訣は、問題を一切出さないという方針で臨むことではない。次々と発生する問題に対して早め早めに対策を講じることで、問題が大きくならないうちに解決することだ。そのために最も大切なことは、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションである。メンバーからPM(プロジェクトマネジャー)への「報連相」(報告・連絡・相談)ができているプロジェクトは、大きな失敗をしないものだ。

 しかしながら現実は、多くのプロジェクトでこの報連相ができておらず、失敗の憂き目を見ている。その原因の一つは、PMが「報連相は当たり前のことであって、メンバーに教えるものではない」と、思っていることにある。多くのプロジェクトを経験してきたPMにとって報連相は確かに常識であり、それをメンバーがしないのは怠慢だと思うだろう。

 特にプロジェクトに参画するメンバーが若手で経験も浅いときには、報連相ができていない状況になりがちだ。こういった状況に陥るのは、メンバーが怠慢で報連相しないのではなく、何を報連相すべきなのかを判断できないからであることが多い。PMはそれに気付く必要がある。

初めてPMを担当したYさんの失敗

 SIベンダーに所属するYさんは、メンバーが10人からなる、あるユーザー企業のシステム開発プロジェクトを任されることになった。

 初めてPMを担当することになって張り切っているYさん。プロジェクトを始めるに当たり「プロジェクト成功の鍵はコミュニケーションにある。いろいろな問題が出てくると思うが、報連相を徹底してやっていこう」とメンバーに伝えた。温厚な性格で口調も穏やかなYさんの言葉に若手中心のメンバーも明るい表情になり、プロジェクトはスタートした。

 プロジェクト開始後はメンバーから日々の進捗報告が上がってきた。内容は「少し遅れていますが、なんとか取り戻します」というものにとどまった。実際に進捗面で大きな問題は起こらず、プロジェクトは順調に進んでいった。

 ところが4カ月後、メンバーが作成し終えた仕様書を、ユーザー企業の利用部門の担当者にレビューしてもらったところ、大きな問題が発生した。「この仕様では業務が回らない」と利用部門の担当者が突然指摘。仕様を一から見直したいと言うのだ。

 Yさんは驚いて「なんで急にそんなことを言い出すんだ?」「問題が起こる予兆はなかったのか?」とメンバーに聞いた。するとメンバーたちは以下のようなことを口々に言い出した。

メンバーAさん:仕様策定の打ち合わせに、利用部門の人たちは参加していませんでした。正直、本当に大丈夫なのか不安でした。
メンバーBさん:利用部門の人に参加するようお願いしたものの、「現場がちょうど忙しい時期なので参加できない」と言われました。結局、システム部門の人たちとだけの打ち合わせになってしまいました。

 メンバーは皆、ユーザー企業側の体制が不十分なことを承知していた。ところが誰もYさんにそれを報告してなかった。

 「どうして、そのことを早く言ってくれなかったんだ。言ってくれれば自分からユーザー企業側の責任者にお願いしたのに…」と思わずうなったYさん。報連相が大切だと伝えたのにそれを怠ったメンバーたちに向かって、Yさんは文句をつけずにはいられなかった。