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 コミュニケーションで大切なのは、やり取りする人と人との間に信頼関係を築いておくことだ。プロジェクトでもPM(プロジェクトマネジャー)のことを信頼しているからこそメンバーは内容ある報連相ができるし、PMが自分のことを信用してくれているからこそ、メンバーは進んで報連相をやる気になる。

 一方で、相互信頼が強すぎるあまり、後になって、「メンバーからの報告内容に疑問が出てきたとき、なぜ踏み込まなかったのか」と、PMが後悔する場合も少なくない。日本人は“相手が嫌がる話をしたがらない”国民性があり、同時に“白黒をはっきりつけたがらない”面もある。

 また報告する側であるメンバーは「自分でなんとかがんばって、心配や迷惑をかけたくない」という気持ちを抱きやすい。受ける側のPMも「メンバーががんばるって言うのならば、深入りしない方がよいだろう」とつい思ってしまいがちだ。

 どちらも悪気があるわけではなく、むしろ相手のことを思いやっての行為なのだが、ことシステム開発プロジェクトに関しては、この甘さが大きな問題になりかねない。PMは、メンバーからの報告内容に深入りするのをためらってはいけない。

報告を信じたかったKさんの失敗

 SIベンダーのPMであるKさんは、3000万円以下のプロジェクトはきちんと成功するが、それを超える規模のプロジェクトになるといつも何らかの原因で失敗してしまう。

 最近もあるプロジェクトで納期遅延とコスト超過を起こしてしまった。このプロジェクトでは、ユーザー企業の担当者との仕様確定が進まず、基本設計フェーズの開始が予定より1カ月遅れてしまった。

 カットオーバーの時期はうしろにずらせないとユーザー企業の担当者から言われたので、なんとか挽回しようとKさんはメンバーとともに頑張った。ところがその遅れがなかなか取り戻せない。結局、1カ月半の遅れでプログラミングフェーズに入った。

 Kさんはスケジュールを見直して、「設計が終わった分から順次プログラミングを開始する」「プログラミングが終わった分から結合テストを行う」などのやりくりをすることで、遅れを取り返そうと計画を変更した。

 変更した計画に沿って作業を進めているメンバーからも「ちょっと遅れていますが、なんとかリカバリーします」「バグが多いので、単体テストを強化してバグをつぶします」などと前向きな報告が上がっていた。しかし結局、最後まで遅れを取り戻せず納期遅延になってしまった。

 プロジェクトが完了後、Kさんやメンバーは反省会を開いて、納期遅延とコスト超過の原因を探ることにした。

 メンバーが反省会で挙げた原因は、遅れを取り戻せる根拠がないのに「遅れていますが、なんとかします」と報告し続けたことだった。「そのような報告ではプロジェクトの問題が明確にならないので、抜本的な対策も講じられなかった」と、メンバーたちは口をそろえた。

 Kさんも「そうなってほしいという願望を持ってメンバーからの報告を聞いていた」と反省した。「どうやったら取り戻せるのか」といった具体策まで掘り下げなかったため、効果的な対応策を打ち出せなかったのだ()。

図●報告を受けるときにPM側に起こりがちな問題
図●報告を受けるときにPM側に起こりがちな問題