PR

 前々回前回と海外の“ソーシャルメディア担当者”が、現在強く意識していることについて述べてきた。そして、このテーマについて述べていくにあたり、いわゆる現場の担当者のことを“ソーシャルメディア担当者”という形で表現してきた。だが、筆者自身は、そもそも海外の“ソーシャルメディア担当者”というポジション自体が、日本国内の企業でイメージされているものとは異なるようにも感じている。今回は、そうした話をしてみよう。

日本の担当者は基本業務の処理だけで忙殺

 読者の皆さんは“ソーシャルメディア担当者”という名称を聞いて、どういった業務をするポジションを具体的に思い浮かべるだろう。おそらく多くの人は、企業の持つTwitterアカウント、あるいはFacebookページから情報を発信し、ユーザーからのリプライや質問などを受けると逐次回答をしつつコミュニケーションを進める業務内容をイメージするだろう。加えて、これまで本連載でも述べてきた「ソーシャルメディアポリシー」の策定や普及・浸透のためのトレーニングといった一連の社内活動や、ソーシャルメディア上を飛び交うユーザーの声を捉えて分析する「ソーシャルメディアリスニング」(傾聴)と呼ばれる業務も思い浮かべるかもしれない。さらに、TwitterやFacebookなどを活用したキャンペーンの企画立案を担当する、というのも典型的なイメージだろう。

 確かに、こうしたイメージは決して間違ってはいない。むしろ、上で挙げたような作業は、いわば“ソーシャルメディア担当者”の業務の中でも、非常に基本的なものといってよい。問題は、日本国内の企業にいる大半の“ソーシャルメディア担当者”にとって、これらの業務をカバーするだけで精一杯な状況になっていることである。もし他の業務と兼任で担当しているとすると、これらの業務すべてをカバーすることすらできない状況にあるのが、おそらく現実ではないだろうか。

 一方、海外の“ソーシャルメディア担当者”のカバー領域は、上記に挙げた業務だけにとどまらない。少なくとも、カバーしている範囲は「ソーシャルメディア」という限定された部分に限らず、「デジタル」という形で、もっと広くなっていることが多く見られる。

海外ではデジタルマーケティングの一環としてチームで活動

 そもそも、企業の推進するマーケティングあるいはコミュニケーション戦略として「ソーシャルメディア」だけが切り離された形で成立するということは、企業規模が大きくなればなるほど考えられない。実は、日本国内で少なからず語られている「ソーシャルメディアマーケティング」という言葉自体が、既に海外では聞かれなくなってきているのが現実だ。海外では、これらについて「デジタルマーケティング」という言葉で、もっと広い形で扱われることが多い。

 現場の担当者も「ソーシャルメディア担当者」というよりは、むしろ「デジタルマーケティング担当者」という意識が非常に強い。結果的に、カバー領域も「ソーシャルメディア」に限定されず、企業サイトやメールマガジンといった、いわゆる「オウンドメディア」と呼ばれる部分も当たり前のように担当しているし、さらにはオンライン広告における戦略やプランニング(場合によってはクリエイティブにも及ぶこともある)までも併せて担当することになる。

 もちろん、カバーする領域がここまで広くなってしまうと、専任の担当者を1~2人くらいアサインしたとしても不十分である。担当するチームはより大きなものとなってくるし、さらには扱う予算規模も比例して大きくなる。つまり、10~20人程度の「デジタルマーケティングチーム」という形で、一つの部門が構成されるようになってくる。

3年後には通常のマーケティング活動の一つという位置づけに

 そして最近では、この「デジタルマーケティングチーム」ですら、もはや3年後には存在していないかもしれない、とさえ言われている。むしろ海外では、存在している方がおかしいのではないだろうか、とさえ語られてきている。

 これは3年も経ったら、「ソーシャルメディア」に限らず「デジタル」という要素そのものが、企業のマーケティング活動において自然な形で使われるのが当然の状況になっているだろう、という考えからだ。そうした状況になったら、わざわざ特別なチームがなくても、企業のマーケティング組織の中で、ごく普通に「デジタル」を活用した戦略や施策が実践されていてしかるべきである。むしろ「デジタルマーケティングチーム」というチームが存在していること自体が、企業としてマーケティングの変化から取り残されている状態になるだろうと考えられているのだ。

 海外で「デジタルマーケティングチーム」に身を置く担当者は、そうした視点を常にリアルな形で意識している。つまり、「ソーシャルメディア」はデジタルマーケティングの領域における一要素に過ぎず、またデジタルマーケティング自体も、企業におけるマーケティング活動全体の一要素に過ぎないという認識ができているのだ。

 逆に、むしろ「デジタル」だけでしか勝負できないようでは、自分自身の今後のキャリアパスも狭まるといった危機感すら覚えていると感じている。彼らは「ソーシャルメディアマーケティング」でも「デジタルマーケティング」でもなく「マーケティング」をやっているのだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。