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今回の投稿は、この半年ほどブランク氏が力を入れているNSF(全米科学財団)の“イノベーション部隊(I-Corps)”に関するものです。2011年の成功をもとに、2012年は、全米の大学から選抜された150チームがブランク氏の指導を受けることになっています。(ITpro)

 私たちは、2011年10月から12月まで、NSF(全米科学財団)のイノベーション部隊(I-Corps)の初めての講座を開催しました。

 科学者とエンジニアの合計63人が21チームを結成。彼らは10週間以内に2000件以上の顧客にコンタクトし、研究所内のアイデアを、並み外れたスタートアップ企業に転換しました。21チームのうち19チームが、開発した技術を商用化する方向に進んでいます。

 各チームのプレゼンテーションを見て感じたのは、私たちが当初期待していたよりも結果が格段に良いということでした。メンターたちのコメントや受講前後のアンケート調査の結果によると、ほとんどチームが、この2カ月間のクラスで、他の人たちが2年間で学ぶことよりも多くのことを学んだと言っています。このため、NSFはイノベーション部隊を拡大して継続することを決めました。

 NSFは2012年中に、米国で最高の科学者による150チームを、リーン・ローンチパッド・クラスに参加させることを決めました。この多数のチームを教えるため、NSFは工学部でアントレプレナーシップ・プログラムを提供している大学を選び出し、イノベーション部隊のネットワークに参加してもらうことにしました。

リピンスキー下院議員は分かっている

 2011年に試験的なクラスを終え、2012年にNSFの初めてのクラスを始める前というタイミングで、下院議員のダン・リピンスキー氏から電話がありました。同氏は、下院議院でNSF、科学、宇宙、技術委員会のメンバーを務めています。工学部を卒業し博士号を持つ同氏にとって、適切な委員会と言えるでしょう。

 同氏は、私のNSFイノベーション部隊のブログを読み、クラスの内容に興味を示しました。同氏はスタンフォード大学に飛んで来て、工学部でまさに始まろうとしているリーン・ローンチパッド・クラスへの出席を希望しました。

 ゲストが私のクラスを聴講したことはこれまでもありましたが、下院議員が参加したのは初めてのことでした。彼は、報道関係者もお付きの人たちも連れずに、このプログラムが、納税者の貴重なお金の無駄遣いか、米国のためになるのかを純粋に判断する目的でやって来たのです。

 彼は、「どうして民間の資金でなく、政府の資金によってこのプログラムが実施されているのか」と、難しい質問を尋ねてきました。私は、イノベーション部隊の目標が、NSFによって“死の溝”と呼ばれる期間のつなぎ資金だと説明しました。NSFからの研究資金提供が終わり、研究チームとしてはそれなりの成果を出し、顧客と市場に関する十分な知識を獲得した後、民間から資金調達するか、既存の会社にライセンスをするまでの期間は、このように死の溝と呼ばれています。

 民間からの資金調達の代わりにするのではなく、資金調達を促すことが目標なのです。イノベーション部隊に費やする金額は、73.73億ドル(1ドル80円として約5900億円)に上るNSFの総予算のうち、わずか0.2%程度の1475万ドル(11.8億円)にすぎません。既に投下された数10億ドルもの基礎研究費は、我が国の規模にしては大きなものかもしれませんが、我が国が競争力を維持し、雇用を創出するためには最良の投資でもあるのです。

 クラスの終了後、私たち教育チームが大好きなピザ店で毎週行っている話し合いに、リピンスキー下院議員も参加しました。もし読者の皆さんが、科学・技術、あるいはアントレプレナーシップに興味があるなら、彼は最高の存在です。彼は完全に理解していたのです。

 2012年は大統領選挙の年なので、「イノベーション」「雇用」「アントレプレナーシップ」といった言葉がもてはやされています。下院議員が単身飛行機に飛び乗り、米国が実際にその3項目を実現することができるかどうか調べに来るとは、驚きでした。リピンスキー下院議員は、ワシントンD.C.に帰り、「イノベーション部隊を全面的に資金援助しよう」というプレスリリースを発表しました。(訳者注:リピンスキー下院議員のプレス・リリースでは「イノベーション部隊が必要とする総費用は、今年が750万ドル(6億円)、来年が1880万ドル(15億円)と比較的少ないが、見返りはとても大きい。NSFから資金援助を受けている多くの研究所は、画期的な研究と技術を開発している。しかし、多くの研究チームは、開発した技術をどうすれば顧客のニーズを満足する製品に転化すればいいか分かっていない」と述べています)

 NSFは、米国政府と大学の研究者、リスク投資家という最良の能力を統合しています。もし私たちが正しければ、科学上の発明と商品化に要する時間を劇的に短縮し、新しい企業の初期リスクを軽減します。この取り組みの成功は、米国にとって雇用の増大、新しい産業創造、永遠のイノベーション優位性の獲得を意味します。

 3人で構成されるチームは、主任クラスの研究員で構成されます。ほとんどの場合、彼らは大学教授で、平均年齢は45歳です。NSFのプロジェクトは、彼らの研究に基づいています。彼ら主任研究員は、自分たちの研究所にいる平均年齢が30歳程度の大学院生を、アントレプレナーのリード役として選びます。加えて、既存の事業あるいはスタートアップ企業の経験がある、平均年齢が50歳のメンター(助言者)が支援します。

 彼らはフード付きのパーカーを着て、ゴムのサンダルをはいた若者たちのグループではありません。(訳者注:この描写は、米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ創業者/CEOに代表される、シリコンバレーのスタートアップ企業の典型的な若いエンジニアを表現したものです)

 NSFのイノベーション部隊に関する私のブログ投稿は、
Part1
Part2
でご覧いただけます。大学のシラバスはこちらで、教科書はこちらで紹介しています。

(訳者注:日本語訳のブログは、ITpro「今こそ!シリコンバレーに学ぶ『興す力』」の下記の記事を参照して下さい
米政府がインキュベーターを開始――全米科学財団のイノベーション部隊(前編)
全米科学財団のイノベーション部隊――2回目の講義:ビジネスモデル・キャンバス