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 民間放送局(民放)による、放送と通信を融合させた新しい取り組みが各所で始まっている。狙いは、番組のリアルタイムでの視聴を再び活性化すること。ネットの力をどうビジネスに結び付けるのか。試行錯誤が続いている。

 2012年4月2日。民放キー局5社(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)と電通が共同で推進する、テレビ向けのビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス「もっとTV」が開始される。もっとTVは、テレビ番組などの見逃し視聴のニーズに応えた有料サービスである。番組の視聴中にリモコンの専用ボタンを押すと、その放送局のVOD配信サイトの画面が大きく表示される(図1)。そこには視聴中の番組に関連した動画コンテンツ(基本は6Mビット/秒)や番組情報などが表示される。

図1 民放キー局共同のVODサービス「もっとTV」
もっとTVでは、リモコンの専用ボタンを押すと視聴者が見ている放送局のVODサービス画面が表示される(a)。関心のあるコンテンツを選ぶと購入画面に移動する(b)。符号化方式はH.264。配信形式はストリーミングのみ。
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 もっとTVの最大の狙いは、見逃し視聴に対応することで消費者によるテレビ番組の視聴機会を増やし、「リアルタイム視聴」の再活性化につなげていくこと。電通によれば、スマートフォンやタブレット端末との連携サービスなども検討しているという。外出先ではスマートフォンで先週放映されたドラマを見て、自宅に戻ってから最新の回のドラマを見る、などの利用シーンを想定している。

 配信形式は、期限付きのストリーミングが基本で、ダウンロードなどには対応しない。課金はコンテンツ単位で、「具体的な料金は放送局が決める」(電通)としているが、1本当たり数百円になるとみられる。

 もっとTVを利用するには、対応のテレビが必要になる。パナソニックは2012年2月、業界で初めてもっとTVに対応したテレビを発表した。同社が開発したJavaScriptをベースにしたミドルウエアである「Ajax-CE」を採用している。

 これまで民放キー局は個別に放送済み番組の有料VODサイトを立ち上げているが、パソコンからの視聴が大半で、放送局の収益の源泉であるリアルタイム視聴の増加につながらなかった。民放キー局が共同でテレビ向けに直接配信することで、状況の改善を目指す。

 ただし、成功への道のりは平坦ではない。最大の課題は、同サービスに対応したテレビの普及である。少なくともパナソニック以外の国内主要メーカーも対応テレビを投入しないようでは、先行きは厳しいだろう。

日テレはFacebookと連携

 民放各社はこのほかに、独自の取り組みを進めている。最も積極的なのは日本テレビ放送網である。同社はテレビ画面内でFacebook上の友達と一緒に番組を楽しめる、ソーシャル視聴サービス「JoiNTV」の実証実験を開始した。米Facebook社の技術協力を得て、日本テレビが開発した(図2)。第1弾として、2012年3月に放送したIT情報番組「iCon」で実験を行った。ソーシャル視聴という新しいユーザー体験を提供することで、リアルタイム視聴を活発化したい考えだ。

図2 仲間と番組を楽しむ
日本テレビはFacebookと連動する「JoiNTV」を開発した。番組にログインすると画面右に同じ番組を視聴しているFacebookの友達が表示される。
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