日立ソリューションズは2012年3月26日に、ケーブルテレビ事業者向け顧客管理システム「BSSsymphony PRITM for SMS(顧客管理)」の販売開始を発表した。このシステムは、KDDIの子会社で国内第2位のMSOであるジャパンケーブルネット(JCN)が開発し一昨年から順次グループ各局で導入してきた稼働実績のあるシステムを基に、製品化したものである。
JCNが顧客管理を開発した元々の狙いは、MSOとして各局を傘下に収める中で、運営ノウハウを共有しグループ全体の経営効率化を図るために各局のサービスメニューの統一を図るだけでは不十分であり、それまでバラバラだった顧客管理システムを統合し、業務を標準化して、グループとして効率化を図ることが不可欠と判断したためだ。2010年5月~12月にかけて14局(現在の局数換算、現在までに16局)で導入するなど急ピッチで実用化を進めてきた。導入したシステムは契約から解約までの一連の業務の流れをカバーするもので、(1)契約管理、(2)料金請求、(3)STB/モデムなどの機器の管理、(4)視聴チャンネル制御といった機器の制御──の大きく四つのサブシステムから成る。
今回は、このJCNの顧客管理システムを受注した日立ソリューションズがJCNからライセンス契約を受けて同システムをベースにシステムを製品化した。これはJCNが培ったノウハウに基づき開発した顧客管理システムを他社でも活用してもらう形で、業界で横展開を図ることになる。こうした展開は「情報システム関連では、JCNとして初めての試み」(常務役員 情報システム本部長の小杉康寛氏)といい、そうした取り組みが必要と判断した背景として、ケーブルテレビ業界の益々厳しくなる事業環境を挙げる。
ケーブルテレビ業界は、競合する通信系事業者が安価な値段を打ち出すなど厳しい競争が全国で始まっている。こうした中でケーブルテレビが競争に生き残る上で、地域力がカギとなるというのは業界の共通の見方である。いわゆる地域密着の事業者として重要なことは、一つがコミュニティチャンネルの強化であり、もう一つが足でこまめにユーザーを回るCS活動の強化である。
この最大のポイントとなるCS活動の強化するためにも業務を効率化し、本当に必要な業務に要員を割り当てることである。また、顧客情報システムを整備することで、CS活動や営業活動もデータに基づき展開が可能となる。「こうしたことに、我々の実績のあるシステムを役立ててもらいたい」と考えたことが、情報システム系でシステムの横展開を始めた背景という。
KDDIとの連携サービスにいち早く対応
このシステムの導入効果として、JCNはいくつか例を挙げて示す。例えば、ライバル事業者が料金を下げてきたとする。その場合でもサービスメニューを決めて、1週間以内にサービスを開始できるという。料金テーブルを書き換えるだけで、請求金額など更新できるためだ。
料金を払ってもらえない場合に督促をするといった場合に、これまでは手動だったという。例えば3カ月待っても支払いがなければ解約手続きを行うといった場合に、従来だとその月になって手動で入力していたが、こうした業務を自動化できる。親会社であるKDDIのような通信事業者であれば当然自動化しているようなサービスは、すべて自動化していった。単独局の利用もあるが、JCNは元々MSOであり、MSO的なグループ経営を推進するための利用も想定されており、局間を横串ししてデータを見ることもできる。
もう一つの強みと強調するのが、通信連携への対応である。この場合はJCNがKDDIの子会社であることが強みになるという。直近ではスマートバリュープランを始め、FMC推進に向けケーブルテレビとの連携を重視するKDDIが今後も様々な連携サービスをケーブルテレビ業界に提案してくることが見込まれる。KDDIの子会社であるJCNは、いち早くそうした情報を入手できる立場である。
この結果、業務を整理しシステム化するといったことにJCNは早くから着手できる。その内容が、JCNの顧客管理システムをベースにすることで、日立ソリューションズの顧客管理システムにも展開できるため、各事業者が情報を入手してゼロから準備を始めるよりスピード対応が可能になる。
タブレット連携、申込書電子化でさらに効率化
JCNは、今後さらに業務の効率化を推し進める予定である。その一つがタブレット端末との連携である。
JCNでは、2012年4月から営業ツールとしてタブレット端末の利用を開始、営業担当者に約1000台を配布した。タブレット端末の有効活用に向けて、申し込み書の電子化を2012年度下期に手がける予定である。
2012年4月から開始した営業ツールとしてのタブレット端末用に開発したプログラムでは、動画などによりユーザーがサービスをイメージでき、ユーザー自らがサービスを選択しやすくするためのツールとして準備した。具体的には、JCNの最新情報やサービスメニューの紹介、チャンネルの紹介など、様々なメニューを用意した。チャンネル紹介用には、端末の記憶媒体に映像を蓄積して紹介する。
さらに、加入工事の様子なども映像で表示する。従来からも紙ベースでは説明していたが、映像による説明でより理解しやすい形とし、工事内容が誤解して伝わることを防止することを目的とする。工事時における契約キャンセルを極力減らせるという効果も期待できそうだ。さらに、「家族構成などから、お薦めサービスをガイドする」「auスマートバリューを含めた料金試算を用意する」など、営業ツールとして作りこんだ。
この営業ツールをさらに発展させて、顧客管理システムと連動させる形で申し込み書の電子化を実現する。JCNが導入したものは、BSSsymphony PRITM for SMSにも反映させる。その結果、さらに業務の効率化を進められるものになると期待する。