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 PM(プロジェクトマネジャー)が、リーダーやメンバーとメールでディスカッションするときに便利なのが、件名だけで返信メールだと分かるメールソフトの機能だ。「Re:」といった返信を示す文字列を最初に加えて件名が引き継がれる機能である。

 例えば、最初のメールの件名を「Aシステムの仕様について」としておけば、その後のメールの件名は、「Re:Aシステムの仕様について」となり、何をテーマに議論しているメールなのかが件名を見ただけで分かる。議論しているメールは、議論の内容を押さえておいてほしいプロジェクトの関係者にもメーリングリストやCC(カーボンコピー)で送れば、議論の経緯を含めて伝えることができて便利だ。

 ただし、プロジェクトでは、PMたちがある話題についてメールで議論していると、いつの間にか別の話題に変わることが少なくない。このとき、返信メールの件名をそのままにしてはいけない。メーリングリストやCCで送られているプロジェクト関係者がメールを確認する作業が煩わしくなってしまうからだ。

メールの件名を書き換えなかったTさんのケース

 Tさんはユーザー企業のシステム室に所属するPMだ。このたび社内ポータルサイトの開発プロジェクトを担当することになった。会社のポータルサイトとして、どのようなコンテンツを公開するのかという基本方針と、社内の各部門の意見を集約してのポータルサイトの構想が固まった。そこでシステム開発を本格的に始めることになった。

 このプロジェクトに参画しているのは、システム室のTさんや管理部門や現場部門などの担当者、経営者代表としてD常務の合わせておよそ10人。レビューや進捗確認といった会議以外の普段の情報交換には、この10人からなるメーリングリストを使うことになった。

 システム開発プロジェクトが始まってしばらくたったとき、管理部門で人事を担当するKさんから下記のような質問メールがメーリングリストで届いた。

件名:セキュリティに関して

Tさん

このたびは、Android端末の件でご迷惑をおかけしてすみません。
当社の営業担当者に確認したのですが、
受注時にAndroid端末でも利用できると言ったのは、
一般にという意味であり、必ずしもすべての機種に対応できる
という意味ではありません。

人事関係のコンテンツなのですが、
人事部門の中でもアクセス可能な人と
そうでない人で分けたいと思いますが、
そのような設定は可能でしょうか。

K

 Tさんはすぐに下記のような返信メールを出して、今のポータルサイトの構成で特に問題がないことを説明した。

件名:Re:セキュリティに関して

Kさん

アクセス権限は人ごとに設定できますので、
人事部の中で細かく分けることができます。

アクセスの対象はディレクトリー単位に制限ができますので、
ディレクトリーを分けていただければコントロールできます。

T

>Tさん

>人事関係のコンテンツなのですが、
>人事部門の中でもアクセス可能な人と
>そうでない人で分けたいと思いますが、
>そのような設定は可能でしょうか。

>K

 これに対して、Kさんは次のようにお礼とともにもう一つ質問を追加した。

件名:Re:Re:セキュリティに関して

Tさん

ありがとうございました。

ところで、コンテンツの中に社員の資格取得情報も含めたいのですが、これは人事フォルダの中にアップしておけばこちらで勝手に更新可能と考えてよろしいでしょうか。

K

>Kさん

>アクセス権限は人ごとに設定できますので、
>人事部の中で細かく分けることができます。
>アクセスの対象はディレクトリ単位に制限ができますので、
>ディレクトリを分けていただければコントロールできます。

>T

>>Tさん
>>
>>人事関係のコンテンツなのですが、
>>人事部門の中でもアクセス可能な人と
>>そうでない人で分けたいと思いますが、
>>そのような設定は可能でしょうか。
>>
>>K

 この後もしばらく、社員の資格取得情報に関するメールのやり取りがTさんとKさんの間で続いた。すると突然、D常務から次のようなメールが届いた。

件名:メーリングリストの使い分け

Tさん、Kさん

2人のやり取りのメールがメーリングリストに載ってメンバー全員のメールに届いていますが、内容からして他のメンバーには無関係です。このようなメールはメーリングリストではなく、直接やり取りした方がよいでしょう。

また、件名が「セキュリティに関して」のままなので、読み落としてはならないと注意してチェックするのですが、実際は資格取得情報の公開という内容になっています。内容が変わったのであれば、件名もそれに応じて変更すべきでしょう。

D

 「確かに言われてみればその通りだ」。TさんはD常務からのメールを読んではっとした。Tさんはもちろん、Kさんとやり取りしているメールがメーリングリストを介して、他のプロジェクト関係者に届いていることは認識していた。しかし、今回のメールのやり取りがD常務やほかの人々にとって煩わしいものになっていることまで思いが至らなかった。「議論に集中しすぎて、そこまで配慮できなかった」。Tさんはそう思いながら、メーリングリストにD常務たちへのお詫びメールを送信。それ以降は、本文の内容に合わせて件名を見直すことを徹底させた。

 その後、TさんはD常務の秘書と会う機会があった。秘書曰く、「Tさん、気を付けた方がいいよ。D常務は『Tたちから届いたメールは大事なんだろうと思って開くのだが、私と全く関係ない内容のものが多くて煩わしいんだよ』って言って、相当怒っていたよ」。それを聞いて、Tさんは背筋が凍る思いをしたのだった。