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 全国22カ所でホテルやリゾート施設を運営する星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表取締役社長は、自他共に認める「観察の鬼」だ(写真1)。常にデジタルカメラとiPhoneを持ち歩き、独自の観察眼で写真を1日に100~200枚も撮る。撮影するのは自社施設に限らず、他社の現場を“偵察”してこっそり撮ることもある。撮った写真は取捨選択し、社内の会議や社員向けの社長ブログ「佳路タイムス」など様々な場で社員にどんどん見せる。気づきを促し、改善のきっかけを提供する。

写真1●星野リゾート代表取締役社長 星野 佳路氏
写真1●星野リゾート代表取締役社長 星野 佳路氏
写真撮影:杉村 航

 星野社長は「人」の観察を重視する。星野社長が撮った写真の大半には人が写っている。サービス業は目には見えないソフト面が顧客満足度に直結することが多いが、「お客様の様子を観察していれば、いろいろなことが分かってくる」(星野社長)。

撮った写真には、バスを待つ間、ゆっくりと景色を楽しめるようにはなっていない様子が写っている
写真2●軽井沢にある「ホテルブレストンコート」のバス停前で写真を撮る星野社長(下)。撮った写真には、バスを待つ間、ゆっくりと景色を楽しめるようにはなっていない様子が写っている(上)
写真撮影:杉村 航(下)

 例えば、2011年6月上旬のある日は、軽井沢にある自社施設「ホテルブレストンコート」の前のバス停に人が並んでいる様子をカメラで撮った(写真2)。バス停の前に3人の女性が並ぶというありふれた光景だが、星野社長は気になった。「バス停の周りは初夏の新緑が美しいのに、バスを待ちながらゆったりと景色を楽しめるようにはなっていない」。直後の会議で同ホテルの社員に写真を見せ、改善策を講じられないかと切り出した。そしてベンチを設置するなどのアイデアを募った。

軽井沢にある「ホテルブレストンコート」のバス停前で写真を撮る星野社長

 社長ブログであれ会議の場であれ、星野社長が“上から目線”で写真を見せつけ、ああしろこうしろと言うのでは社員は萎縮してしまうだろう。その点、星野社長の伝え方にはユーモアがある。

 例えば北海道占冠村で運営する「アルファリゾート・トマム」に移動する飛行機の機内テレビで、トマムのCMが流れているのを見かけた。星野社長はここでもこっそりと写真を撮った。そこには、テレビ広告画面ではなく、離陸後に時間がたって熟睡中の乗客たちが写っていた。星野社長がトマムの営業会議でこの写真を見せ、「誰もテレビを見ていないよね」と言えば、社員は苦笑するしかなかった。

 単にCMを流せばいいというのではなく、きちんと見られているかどうかまで観察する大切さを社員に伝えたわけだ。