第5回目の今回では、組織におけるBCMの継続的改善のポイントについて述べたい。
「継続的改善」の勘所は単なるPDCAではない、「基準と設計」にある
一般的にBCMの継続的改善とは、組織においてBCMのPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを確実に回すことである。そのため最も重要なことは継続的改善のマネジメントシステムを組織にしっかりと定着化することであると言われている。
しかし、そもそもBCMの継続的改善の目的とは何だろうか?PDCAサイクルを確実に回すことは、目的ではなく手段(HOW)であり、BCMの継続的改善の目的とは、「組織の事業継続能力を常に経営環境の変化に最適化し向上し続けること」である。
この目的を果たすために重要なポイントは1点ある。1つは「組織の事業継続能力を測る基準を持つ」こと、もう1つは「継続的改善を現場主体で実施できる運用設計」である。この2点を考えないPDCAサイクルの導入は必ずBCM活動の形骸化を招く。
事業継続能力を測る基準とは
BCMの継続的改善の目的が「組織の事業継続能力を常に経営環境の変化に最適化し向上し続けること」にあるならば、組織の事業継続能力を測る基準を待たねばならない。どれだけ自身の取り組みが前年あるいは前回の見直し時点より変化しているのかを測る基準が無ければ、変化の計測はできず、前年度の反省や次年度に向けた課題も明確にできない。
では、そのためにどのような基準を持てばよいのだろうか。事業継続能力は、ハード・ソフト・スキルにより構成されることは前回までの本稿で説明して来た。事業継続能力の計測基準とは、
- ハードの対策レベル
- ソフトの対策レベル
- スキルの対策レベル
の3つの要素により構成される。
それぞれの対策レベルを例えば数段階で設定し、各段階のどこに組織がいるのかを常に明らかにすればよい。こうすることで進捗と課題を明らかにできる。いわゆる成熟度モデルによる管理手法である(図)。
大きな組織の場合において、このように各組織の取り組みの進捗を一覧形式で可視化することには、各部門の取り組みモチベーションを向上させる効用もある。