今回からは、2回にわたって、メンタルシック(心の病)の発生原因を考察していく。なお、以下の論述は、筆者がマネジメントしていた企業における問題解決に先立って実施した、組み込みソフトウエア開発を取り巻く状況を分析したものであることを念頭にお読みいただきたい。
第2回の今回は、外的要因・内的要因のうち、前者の外的要因(=ソフトウエア開発環境の変化)を考察する。外的要因として主に挙げられるのは、(1)開発規模の巨大化・高度化・複雑化、(2)低コスト化・短納期化──の2つである。
開発規模の巨大化・高度化・複雑化
2000年以降、組み込みソフトウエアの開発環境に大きな変化が起こった。図1と図2は、経済産業省から2010年4月に発表された、『産業競争力を担う組込み技術の今後の展開について』からの抜粋資料だが、組み込みソフトウエアの規模が急拡大している。
これには幾つかの理由があるが、最大の理由としては、製品の付加価値の依存部分が急激にソフトウエアに移行していることが挙げられる。
自動車を例に取れば、2000年頃(注:ネットで当時のカタログを検索すると内容が確認できる。例えば日産シルビアはhttp://autos.yahoo.co.jp/ncar/catalog/model/NI/S053/)のカタログを見ると、エンジンやサスペンション、本革シートやウオールナットの木目など、ハードウエアや素材の説明に重点がおかれ、およそ7割以上がハードウエアに関する記述だった。まさに他社との差別化のポイントはハードウエアだったのである。