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 今回は、ベトナムからオープンソースソフトウエア(OSS)の活用状況を見ていきましょう。ベトナムでのビジネスの拠点となっている、北のハノイ市と南のホーチミン市にある“生きの良い”ベンチャー企業を取り上げます。

写真1●Luvina Software社
写真1●Luvina Software社
左上はLuvina社の玄関、右上はレ・クアン・ルオン社長、下は教育コースの授業風景。

 ハノイ市にあるLuvina Software社は、JavaやPHPなどを用いたシステムインテグレーションを得意としているベンダー(写真1)。日本を中心に世界中からオフショア開発を受託しています。社長のレ・クアン・ルオン氏は、東京工業大学で6年間学び、日本のIT企業で2年間働いた経験を持っています。そのため、“ベトナム人でありながら、国際感覚を持っている人”です。こんな風に紹介したのは、ベトナムが“OSSの発展の初期フェーズ”にある理由とベトナムでのビジネスの難しさが、この点にあるからです。

 レ社長いわく、多くのベトナムのプログラマが共通に持つ気質の1つとして「言われたことを最小の労力で実行する」という考えがあるそうです。ソフトウエア開発では「ソフトウエアが動かず、仕様とは異なったものであってもよい。仕様通り動作しているかを確認するのはテスターの仕事」となります。バグは、テスターから報告されてから直せるならばよしとします。そのため、テストに回ってくるプログラムの品質はほぼ最悪の状態。差し戻しが頻発し、テストコストが膨れ上がり、プロジェクトが崩壊していく――。こういう状況をレ社長は何度も経験したそうです。

 これを克服するため「ベトナム流に染まる前に世界標準の開発手法を教育するしかない」とレ社長は考えました。Luvina社では2008年から大学生4年生向けの教育コースを開設。本コースの生徒を採用して育てています。この成果もあり、現在ではほぼスケジュール通りに、十分な品質を持ったソフトウエアを提供可能となったそうです。

写真2●Green Sun社
写真2●Green Sun社
左上はGreen Sun社の玄関、右はグエン・ミン・ベト社長、左下はオフィス風景。

 南のホーチミン市は、北のハノイ市より遅れて発展したため、まだ若めの企業が多い地域です。そのため、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン向けアプリを得意としています。そうしたベンダーの1社であるGreen Sun社のグエン・ミン・ベト社長も東京工業大学に留学しており、国際感覚を持っている人物(写真2)。やはり、レ社長と同様の考えに行き着いたそうです。

 Green Sun社ならではの手法として、外国人インターンを受け入れています。日本の大学から、翻訳のインターンに来ている学生もいます。インターン生が“外国人の思想”まで含めて翻訳して伝え、先進的なビジネス感覚を持ったシステムエンジニアを育てるのに一役買っているのです。

 Luvina社やGreen Sun社も含め、ベトナムのベンダーは、OSSを使うのみでOSSプロジェクトに参加して活動している人はまだ見当たりません。OSSの活動は、対価だけでなく、精神的な満足感を求めるものとなります。言われたことを最小の労力で実行するだけで、主体となる気持ちがない状態では、OSS活動は理解できません。Luvina社やGreen Sun社は、こうした主体性を考える動きが出てきている初期フェーズなのです。

レポーター:今村のりつな
SIProp.org 代表/OESF CTO
PC系から新時代に移行するためのエコシステムを台湾の政府系研究機関で開発中。