MDCRが発足して以降、4年ぶりとなる日本企業の全額出資子会社が4月、ヤンゴンに2社誕生した。いずれもITベンチャー企業の拠点である。Web製作のラバーソウルと、システム開発のサイバーミッションズのミャンマー現地法人だ。会社設立に向け、2社は新卒や中途の採用を2011年秋から着手しており、ラバーソウルは10人、サイバーミッションズは15人を雇用した。
日本語が話せる人材が月1万円
両社はさらに人材を増やす計画だ。ラバーソウルは1年以内に100人、今後数カ月でサイバーミッションズは50人まで拡充する。

「日本語は話せる?」「どんなソフトウエアを使えるの?」。ラバーソウルの住友英二会長が矢継ぎ早に質問を繰り出す。これは5月に、ヤンゴンで行った採用面接の一コマだ(写真3)。
同社はオフショア開発を積極化しており、中国に200人、ベトナムに80人の開発技術者を抱える。中国の人件費高騰によるリスク回避などのために目を付けたのがミャンマーだった。「日本語が話せる人材を月1万円程度で雇用できる魅力は大きい。しかもベトナム人よりもプログラミング能力が高そうだ」と住友会長は話す。
2社に続けとばかりに、ITベンチャーがミャンマーにオフショア開発拠点を設ける。システム開発を手がけるアクロクエストテクノロジーとアライズもそれぞれ、ミャンマーでの全額出資子会社の設立に向け申請を終えた。順調に審査が進めば、2013年初頭から春には、会社設立の認可を取得できる見込みだという。

両社は4月末、採用者に日本語教育とJavaプログラミングなどのIT研修を開始した(写真4)。アクロクエストの新免流社長は、「日本語能力や日本の仕事の理解力などを考慮すると、いずれ上流工程も任せられる可能性が高い。研究開発機能も持たせたい」と、コストだけでなくポテンシャルの高さにも期待する。
これらITベンチャー4社のミャンマー進出を後押ししたのが、中堅中小企業の新興国進出支援サービスを手がけるグローバルイノベーションコンサルティング(GIC)だ。同社の岩永智之社長は、日本IBMを経てDCRへ入社し、MDCRを2008年に設立した中心メンバー。MDCRの初代社長を務めた人物でもある。これまでのミャンマーでの現地法人新設のノウハウを生かし、独立した。
日本製サーバーの販売が始まる

ミャンマーは現地企業向けIT機器の未開拓市場としても、将来の成長が有望視され始めている。NECは現地IT企業大手のKMDを通じ、5月から企業向けサーバーやストレージの本格的な販売に乗り出した。ミャンマーに進出した日系企業に加え、現地大手企業や政府に売り込む。
これまでミャンマーでは、法人向けIT市場といっても、せいぜいPCの販売が中心だった。業務システムやサーバーが必要でも、経済制裁中のミャンマーでは米IBMなど米IT企業のサーバー調達が難しく、シンガポールの拠点で購入して輸入するなどの手間がかかっていた。PCは中国のレノボ製が普及し、部品だけを海外から輸入してミャンマー国内で組み立てるオリジナルPCも需要が多かったという。
ただ、「今後は大手企業や政府案件を中心にシステムやサーバーの需要が増えてくる」。KMDのボ・ボ・ルイン ディレクターは、NECのサーバーを売り始めた背景をこう説明する。同社は富士通のPCも販売しており、「今後は富士通製のサーバーも取り扱えるように交渉している」(同氏)と明かす。