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 本連載は、「『ソーシャルメディア』『ビッグデータ』という言葉の両方に関心がある人」「ソーシャルメディアのデータを分析すれば、消費者の考えていることが分かるかも、と期待している人」を読み手として想定している。そうした方々に向けて、データ活用の落とし穴と、適切な活用法を具体的に解説していく。筆者はネット上の口コミ分析サービスを提供する企業で、日々、データを活用した新サービスの企画に従事しており、そうした実務的な知見を踏まえて論述する。

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 掲示板やブログ、Twitter、mixi、Facebookなどのソーシャルメディアに代表されるネットのサービス上では、日々膨大な量の情報が発生している。

 掲示板やブログに書き込まれた意見や感想、日記、Twitterでのつぶやきなど、確かに、10年前では考えられないほど、粒度の細かい消費者の発言がネット上で観察できるようになった。

 こうしたソーシャルメディア上にある大量のデータを分析することで企業のマーケティングの可能性が広がると期待している向きも多いだろう。実際、いろいろな可能性や成功事例が語られている。だが、そうした話だけでは「何が分かって、何が分からないか」という感覚をつかむことは難しい。

 それだけに、ソーシャルメディアのデータ分析に対して過大な期待を抱いてしまう人も多い。そうして「何か特別なことをやって、すごい成果を上げる」ことを目指すと失敗しがちだ。そこで本連載ではソーシャルメディア分析の際に陥りがちなパターンを挙げ、等身大の成果を上げられる使い方について述べていきたい。

 ただし、データ分析の手法はソーシャルメディアの状況などに応じても時々刻々と変化している。それだけに、時代に左右されないような鉄則を示せるとまでは考えていない。あくまでも「現時点の見解」であることにご留意いただき、お読みいただきたい。

ある上司と担当者の会話

 今回は「ソーシャルメディアの口コミを分析すれば、従来型のアンケートは不要になる」「ソーシャルメディアの口コミを分析するに当たっては、取りあえずデータさえあれば分析して、有用な調査結果が得られる」といった誤解について、考えを述べたい。

 まずマーケティング部署を想定した以下の会話例をお読みいただきたい。このようなシーンに、心当たりはないだろうか。

上司:インターネットのソーシャルメディアって消費者同士が情報をやり取りしているんだよね。
担当者:ええ、そうですね。
上司:そこから自社製品に対する声を拾えないかな、アンケートとかってお金かかるじゃない。
担当者:検索すれば出てくるとは思いますが…何が分かればいいんです?
上司:とにかく、ユーザーの生の声を知りたいんだよ。「故障のこと」とか「使いやすさ」とか何かありそうだろ。ちょっと調べてみてよ。
担当者:(“うわ、ざっくりした指示きた…”)はい。やってみます。

(上司が退室した後で、担当者が独り、分析を試みる)

担当者:取りあえず製品の名前でググってみてと…うぁ通販サイトばっかりだ。ブログ検索の方がいいか…幾つか書いてあるブログがあるな。あ、掲示板サイトだと…うわぁたくさんある。Twitterだともっとたくさんだろうな…。
担当者:…で、なんて報告すればいいんだろう。これいちいちプリントアウトして見せればいいの?

「口コミの宝庫」と、アンケートから得られる情報の違いとは

 言うまでもなく、消費者の意見を得る代表的な手段はアンケートである。しかしアンケートの実施には以下の手順が必要なので、前述の上司がこぼしていたように、金額的にも時間的にも大きなコストがかかる。

  • 誰の意見を聞きたいのかを決める
  • それを正しく代表する回答者(パネル)の抽出方法を考える
  • 具体的な調査方法の検討
    「商品の感想」どこで知ったのか」などを問うのであれば商品にアンケートハガキをつけるなど
    「ブランド認知」「評判」などはリサーチ会社にパネル調査(=調査対象を長期間固定して継続的に実施)を依頼する
  • 調査票を設計
    調査目的に合致する質問内容
    回答者を疲れさせない分量などを考慮
  • 調査票の配布と回収、結果の分析

 インターネットが普及するに従って、ネットリサーチ会社が登場し、アンケートの配布や回収、集計などは省力化され、コストが大幅に下がった。だが、パネルの選定、アンケートの設計や分析にかかる手間は変わっていない。

 とはいえ、アンケートは、しかるべき設問を設定し、正しいパネルを選べば、調査目的である知見はほぼ得られる。