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 「クラウドは産業革命にも比肩し得るパラダイムシフト」---米Red Hat 社長兼CEOのJim Whitehurst氏は、米国ボストンで2012年6月26日から29日まで開催された同社のイベント「Red Hat Summit and JBoss World 2012」の基調講演でこのような認識を示した(写真1関連記事)。その認識どおり、Red Hatはクラウドに向け全力を投入している。IaaS管理ツール「CloudForms」、開発者向けPaaS「OpenShift」の提供を開始。分散ストレージソフト「Red Hat Storage Server」やKVS「JBoss Data Grid」もリリースした。

写真1●米Red Hat 社長兼CEOのJim Whitehurst氏
写真1●米Red Hat 社長兼CEOのJim Whitehurst氏
Red Hat Summit and JBoss World 2012 基調講演
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 有償のLinux市場ではトップシェアを誇る同社だが、クラウドの領域ではすでに先行するベンダーも多い。信頼性よりも先進性やコストが優先される場面も多いクラウドでも成功できるのか。米国ボストンで開催された同社のイベント「Red Hat Summit and JBoss World 2012」と、CEO Jim Whitehurst氏、CTO Brian Stevens氏、日本法人の代表取締役社長 廣川祐司氏らトップへのインタビューから同社の戦略を探る。

すべてオープンソースで売上11億ドル

 Red Hatのエンタープライズ領域での存在感は高い。「有償Linux市場での世界シェアは約62%」(Red Hat 副社長兼プラットフォーム事業部長 Jim Totton氏)と過半数を大きく超える。特にミッションクリティカルなシステムでは、東京証券取引所、ニューヨーク証券取引所など世界の主要な取引所の中核で採用されるなどメインフレームの後継となっている。「24カ国の28の証券取引所がRed Hat Enterprise Linuxで動いており、世界の取引高の半分以上を扱っている」(Red Hat 上級副社長 Paul Cormier氏)。

図1●Red Hatの売上の推移
図1●Red Hatの売上の推移
レッドハット 代表取締役社長 廣川祐司氏の講演資料より引用
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 売上は着実に増えている(図1)。2012年度(2012年2月末決算)の売上は前年比約25%増の11億3000万ドル(約900億円)、純利益は1億4660万ドル。CEOのWhitehurst氏は「次は5年以内に30億ドルを達成する」と意気込む。

 Red Hatが大きなシェアを占めた理由として、Whitehurst氏は多くのオープンソース開発者が在籍していること、提供しているソフトウエアのすべてがオープンソースであることを挙げる。

 Red Hatは企業として最も多くの修正をLinuxカーネルに提供している。Linuxカーネルのバージョン 3.0では、修正のうち11.9%がRed Hatに在籍する技術者によるものだ(図2)。残りの約9割には、IBM、HP、GoogleなどのほかNovellやMicrosoftといったRed Hatの競合企業も含まれる。

図1●Linuxカーネル 3.0の改良を行った企業のランキング
図2●Linuxカーネル 3.0の改良を行った企業のランキング
The Linux Foundationの資料より引用
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 そしてRed Hatが提供しているソフトウエアは、すべてソースコードが公開されている。クラウド管理ツールであるOpen Shift Originなど、クローズドソースのソフトウエアをRed Hat買収して公開したものもある。ソースコードが公開されているため、容易にクローンを作ることができる。実際にRed Hat Enterprise Linuxと同じソフトウエアのバージョンを使用し、Red Hatの商標を取り除いたCentOSなどのクローンOSが存在し、広く使われている。

 しかしそのことで、Red Hatの標準としてのポジションは逆に堅いものになった。コストを節約したいユーザーは、安価な競合Linuxディストリビューションではなく、クローンを利用した。結果としてRed HatとそのクローンがLinuxにおけるスタンダードとなった。Linuxが基幹システムに拡大するにつれ、信頼性とサポートを求めるユーザーによるRed Hat Enterprise Linuxの採用は拡大した。