一般消費者向けに開発されたIT、コンシューマーITを業務に生かす「コンシューマライゼーション」が、ビジネスパーソンの業務スタイルを変えつつある。
コンシューマライゼーションとは、消費者向けの製品やサービスが持つ「楽しさ」「気持ち良さ」「ストレスのなさ」「ワクワク感」を、会社の業務にも生かす試みである(図1)。「私物のスマートフォンを業務にも使う」「社内SNSを導入する」などコンシューマーITの機能を取り入れるだけではなく、コンシューマーITの考え方そのものを採用する。

皆が同じ場所で会話しているようなTwitterのリアルタイム感、意気投合した仲間と気軽にコラボレーションできるFacebookの躍動感、自分の体が画面上のプレイヤーと一体化したようなKinectの気持ち良い操作感。コンシューマーITが実現したこれらのユーザー体験を、業務やオフィスの世界に取り込み、社員の生産性や満足度を高めるのがコンシューマライゼーションの本質である。
大手ベンダーも体験を取り込む
大手ITベンダーは、コンシューマーITが持つユーザー体験を積極的に企業向けIT製品に取り込んでいる(図2)。ERP(統合基幹業務システム)製品など機能面での差異化が難しくなる中で、ユーザー体験こそが企業ITを大きく差異化する要因と考えるからだ。

例えば、独SAPが開発しているインメモリー型データベース管理システム(DBMS)の「HANA」。これは元々、米グーグルのWeb検索サービスに触発され、開発を始めたものという。SAPジャパン リアルタイムコンピューティング推進本部 HANA プロダクトマネージャの池田真人氏は、「グーグルは、Web上の膨大な情報を検索するため『待ち時間が限りなくゼロ』というストレスのなさを目標にした。この考え方を企業ITにも取り入れるべきだと考えた」と語る。