スモールコアサーバーは実際にどんなアーキテクチャーになっているのか。設置スペースや消費電力を1ケタ減らせる理由を見ていこう。
スモールコアの特徴は、回路面積当たりの処理性能を高めやすいことだ。プロセッサには「ポラックの法則」と呼ばれる経験則がある。プロセッサやコアの回路面積を2倍に増やしても、性能はルート2倍(約1.4倍)にしか高まらないという法則だ。
例えば、スモールコア2個とラージコア1個を比較したとする。総面積は同じであっても、総演算性能はスモールコアのほうが高い。一方、プロセッサの消費電力は回路面積に比例する。つまり同じ処理性能で比較すると、スモールコアのほうが消費電力は小さい(図1)。
消費電力が小さいということは発熱も少ないため、高密度・高集積にすることもできる。そのため、低消費電力の大規模サーバーが作れるというわけだ。
サーバーそのもののアーキテクチャーも、スモールコアサーバーと従来のサーバーとでは大きく異なる。
違いの一つは、冷却ファンや電源といった周辺機器を大規模に共有化している点だ。ブレードサーバーでも数台のサーバーが電源やファンを共有しているが、スモールコアサーバーでは数百ものサーバーが共有する。これにより、サーバー1台当たりの周辺機器の消費電力を大幅に削減できる。
もう一つは、プロセッサ同士をつなぐネットワーク性能を重視する点だ。
HPが採用するサーバー開発プラットフォーム「Redstone」では、外付けネットワーク機器なしで数千台のサーバーを相互に接続できる。1台のサーバーが五つのイーサネット端子とスイッチ回路を備えているからだ。米シーマイクロの製品では、独自インタフェースを6本備えるネットワークLSIを実装し、それを介して各サーバーをつないでいる。
サーバー機能を1個のチップに
HPのRedstoneでは、サーバーの標準的な機能を1個のチップに集約したプロセッサを搭載することで、集積度や省電力性能を高めている(図2)。システムに必要な機能を一つのチップで実現しているため「SoC(system on a chip)」と呼ぶ。
Redstoneが採用するのは、ベンチャーの米キャルクセイダが開発したプロセッサ「EnergyCoreECX-1000」である。消費電力は1.5Wほど。ARMコア4個を搭載するほか、イーサネット、ハードディスク装置用インタフェース、メモリーインタフェースといったサーバーに必要な各種インタフェースを標準搭載する。キャルクセイダはこのSoCを、「サーバー・オン・ア・チップ」と表現している。