韓国人はとにかく待つことが嫌いだ。昨今の韓流ブームで既に知られているかもしれないが、その気質は“パルリ精神”と言い表される。パルリとは日本語で「早く」という意味で、韓国の至る所で見受けられる。バスが停車する前にドアを開ける運転手や、道路に身を投げ出しながらバスを待つ乗客の姿はその一例といえるだろう。現地の社内でも「パルリ! パルリ!!」という言葉を頻繁に耳にする。
そうした時間を余すことを嫌う韓国人のパルリ精神とマッチしたのが動画コンテンツである。バスや電車での移動時や待ち時間に、多くの人が携帯端末でテレビやYouTube、保存した動画などを視聴している。いまや韓国人とって、動画コンテンツは手放せないものとなっている。
動画コンテンツを楽しむインフラ整備にも力が入っている。例えば携帯端末向けの放送は韓国が世界に先駆けた。欧州のデジタルラジオ方式「DAB」(Digital Audio Broadcast)をベースに開発した「地上波DMB」(Digital Multimedia Broadcasting)である。2005年12月に首都圏での放送を開始し、2006年5月には首都圏の地下街にも中継施設を整備した。2006年6月に開幕したサッカーのFIFAワールドカップを、多くの市民が視聴できるようにするためである。地上波DMBだけでなく、今では通話、インターネット接続を地下でもどこでも利用できるようになっている。
コンテンツ視聴をもっと快適に

通信環境は十分整備されているが、これだけで動画コンテンツをストレスなく見られるとは限らない。サーバーのレスポンスが遅いなどの原因で、動画が見づらい状況も起こる。これはパルリ精神の韓国人には大きなストレスとなる。Webサイト運営企業にもダメージだ。Webページの表示スピードが1秒遅れると、顧客満足度は16%ダウンするといわれる。
グローバル展開するCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)事業者であるシーディーネットワークスが生まれた背景の一つには韓国人のパルリ精神がある。韓国ローカルのCDN事業者として発足したシーディーネットワークスは、2005年にグローバル展開を開始した。当初は物理的な距離による遅延が大きな問題となったが、ユーザーに「パルリ! パルリ!!」と急かされながら試行錯誤を重ね、遅延を解消するアクセラレーションサービスを生み出した。
デジタルコンテンツの爆発的な拡大に伴い、コンテンツ視聴に対するユーザーのパルリ精神はより厳しくなっている。また、韓国にとどまらず世界中にも同様の精神が広がっている。もはや誰にも止めることのできないこの精神に応えていくことが、我々の使命であると強く感じる。