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 前回は、翻訳の品質が顧客満足度やビジネスの成果に直結しているという話をしました。翻訳品質以外には、どんなキーポイントがあるのでしょうか。

市場への投入期間(Time-to-Market)の重要性

 例えば、製品・ソリューションをマーケットにいかにして早く投入することができるか、ということも収益に直結する重要なキーポイントです。

 具体的な例をあげて考えてみましょう。

 あるエレクトロニクスパーツを製作、販売している会社があるとします。販売のための媒体は、昔ながらの紙のカタログとそれをPDF化したものです。余談ですが、「いまだに紙の製本カタログ?」と思う人も多いかもしれませんが、現実的には、いまだに使い勝手のよいカタログによるグローバルビジネス展開をしている会社も多いのです。

 この会社では、2000ページのカタログをカテゴリ別に5種類、日本語で作成し、それを10言語に翻訳して各国でグローバルビジネスを展開しています。1ページにつき平均200ワードとしますと、1言語につき

 2000ページ×200ワード×5種類=200万ワード

となります。これを10言語に対して翻訳していると考えると、2000万ワードのコンテンツを毎年作成することになります。

 製品の仕様や外観は開発の段階で何度か変更が入るのが現実です。そのため、開発と並行してコンテンツの記述や写真撮りをして、変更があればその都度変更するというプロセスをとっています。

 製品のライフサイクルと収益の最大化を考慮すると、製品が完成した時点で、全世界同時にビジネスをスタートできるのがベストですが、この会社ではそうはいきません。なぜなら、まずは日本語で仕様書を記述し、写真撮りをし、キャプションをつけ、DTPでレイアウトを決め、サンプルを作成し、何度か校正をいれて、やっと日本語版のカタログが完成するからです。

 日本のビジネスは、この段階でもちろんスタートできます。しかしながら、グローバルビジネス展開の準備は、この時点からスタートなのです。

 多言語化のためには、まずは英語にしなければなりません。通常、日本語から直接、多言語への翻訳はしません。なぜなら、それができる翻訳者は多くないからです。

 もちろん、日本語から中国語や韓国語へ直接翻訳する場合はありますが、多言語化の効率や翻訳リソースの多さを考慮すると、中間言語(Pivot language)としていったん英語に翻訳してから多言語化を実行するのが効率的であり低コストなのです。

 そこで、まずは、日本語を中間言語である英語にします。

 この会社では、ほとんどの日本のグローバル企業と同様に、長年の付き合いがある日本人翻訳者が和文英訳をしています。これがいわゆる「日本人英語(Japanese English)」であるため、あいまいな表現や受動態が多用されていて、中間言語として適切な簡素化された構造化英語(Simplified Structured English)になっていないのです。

 これは、次工程の多言語化の翻訳品質に大きな影響を及ぼします。ちなみに、筆者の会社では、必ずその分野に精通している英語圏で生まれ育ち教育を受けた、日本語を理解する翻訳者が簡素化された構造化英語に翻訳します。

 このようにしてでき上がった「日本人英語」をもとに2000万ワードの翻訳作業が平行して開始し、その後、各言語でDTPによるレイアウト調整などが実施されます。

グローバル情報管理によるプロセスの効率化が重要

 収益の最大化のためには、このようなコンテンツの言語変換作業にかかる時間は、短ければ短いほど、良いことはいうまでもありません。それだけ市場への参入が早くなり、販売機会が増加するからです。

 しかしながら現実的には、この会社では、各言語でのカタログ製作に1年かかっています。翻訳作業は個人差がありますが、一般的に1人の翻訳者が1日で翻訳できるワード数は2000ワードです。

 先ほど計算した1言語について5種類のカタログの200万ワードを翻訳するには、5人で作業しても200日かかる計算になります。さらに違う翻訳者によるレビューチェックをしたり、DTPレイアウト、印刷などの工程を考えると、9カ月はかかることになります。そのため中間言語である英語への翻訳作業を並行して実施したとしても1年かかってしまうのです。

 これでは、販売機会の損失は避けられません。また、これらのプロジェクトを並行して管理するための人員コストも甚大です。10言語に翻訳するとなると50人の人員が必要になります。

 製品のライフサイクルが短くなっている中、いかにしてグローバルビジネスを最大化するかは、グローバル情報管理のプロセスを効率化する上で必須です。また、スピード効率を良くするためには、機械翻訳も有効となります。各国、各言語でのコンテンツ制作やローカライズは、コストではなく、ビジネスの成否を左右する「ビジネスドライバー」そのものなのです。

相馬 正幸(そうま まさゆき)
SDLジャパン 代表取締役社長
相馬 正幸(そうま まさゆき)北海道大学工学部卒業後、日本IBM、外資系IT企業代表を経て、2008年8月より現職。SDLでは、グローバル企業のグローバルビジネス展開を加速するため、コンテンツの作成から、管理、多言語翻訳、マルチチャネルパブリッシング、顧客サービスの最適化まで、グローバル情報管理のトータルソリューションを推進。日本法人の拡大にも貢献し、入社4年で社員数を50名から150名まで成長させる。