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 前回、ソーシャルメディア上でのマーケティング・コミュニケーション活動において「競合」つまり「Competitor」の存在を常に意識しておかなければならない、ということについて述べた。仮にソーシャルメディア上で、自社ならびに競合他社が何らかのマーケティング・コミュニケーション活動を実施していた場合、自分たちの施策や戦略のパフォーマンスを測定するための情報とほぼ同じ程度の情報を、競合他社についても得ることができる。

 このように競合の動きを調べることで、たとえばゴールやKPIの設定におけるベンチマークとして活用できるのはもちろんのこと、競合他社の顧客の反応などから得られるインサイトなども含め、非常に多くの情報を得ることができる。これらを積極的に利用しない手は無い。

海外では専門の部隊で収集した情報を戦略に役立てている

 海外では、ソーシャルメディアの利活用は単にマーケティング・コミュニケーション方面だけにとどまらないのが、もはや当たり前になりつつある。たとえば筆者が以前に身を置いていた企業では、自社のテクノロジーを業務に利用している顧客に対し、その顧客満足度を調べる目的で顧客から直接回答を収集するサーベイを大規模に実施していた。数年前からは、そのサーベイに加えて、ソーシャルメディア上に飛び交っている声の分析を合わせた形で総合的な評価を行うようになっている。直接回答を収集するだけではなかなか得られない顧客の本音をソーシャルメディア上から集めるのは、ある意味理にかなったやり方とも言えるだろう。

 このようにリサーチを目的としたソーシャルメディアの利活用は、海外では積極的に推進されている。“Make social media data actionable”(ソーシャルメディアから得られるデータを、その後のアクションにつなげられるようにする)というテーマで、以前から様々な試みがなされているし、そのための投資も積極的だ。ソーシャルメディアの「リスニング・ツール」は無償・有償問わず数多く開発されており、多くの企業が利用している。

 欧米の企業の場合、こういったリスニング(傾聴)を実施していくために、自社内できちんと担当者をアサインするか、あるいは外部の専門コンサルを利用することが多い。規模が大きくなればなるほど個々人の業務範囲が限定されてくるといったように、いわゆる縦割りが強くなってくることも考慮しなければならないが、少なくともソーシャルメディアのリスニング、そしてその後の分析、さらに次の活動に向けての戦略立てといった業務は、他の担当が片手間に行うのではなく、かなり専門化された領域になってきている。

 筆者が現在所属している企業でも、本社にはデジタル領域の分析専門のチームが存在している。そして、そのカバー範囲はかなり広く、かつ深い。たとえば自社のWebサイトやメールマガジン(つまりオウンドメディア)のトラフィックやパフォーマンスなどの分析はもちろんのこと、他のオンラインメディアに出稿した広告の効果(つまりペイドメディア)も測定している。さらに自分たちがソーシャルメディア上に開設している窓口から発信されているメッセージの波及効果や、顧客がソーシャルメディア上で発している声も分析している。つまり、ソーシャルメディアに限らず、デジタルマーケティングにおいて必要とされる情報を一つのチームに集約させ、これらを総合的に分析した上で戦略を導き出しているわけだ。

今後は日本でも「分析」が重要に

 日本の場合、広告なら広告、WebサイトならWebサイト、そしてソーシャルメディアならソーシャルメディアというように、それぞれ単体ではきちんとデータを集め、分析がなされていることが多い。だが、これらを集約させて総合的に分析し、そこから先のアクションまで導き出すということまでは、まだなかなか実行されていない。

 今後、企業がソーシャルメディアを活用していくということにおいて「分析」が重要なキーワードとなってくることは間違いない。自分たちがソーシャルメディア上に投げかけた発言が、どう波及したかを単に追いかけるだけではなく、自分たちと関係を持つ(持ってほしい)顧客の言葉を拾い上げ、かつ次にどういったアクションにつなげていくかという戦略までを考えることが求められてくる。“Make social media data actionable”ということを常に意識していけば、ソーシャルメディアの使い方もまた変わってくるはずだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。