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 インターネットの普及で人も含めた社会システムが互いに「過剰結合」している。この発想が本書の核をなす。小さなほころびがインターネットで伝搬し、経済不安や政治の不安定を引き起こす。アイスランドの経済破綻やリーマンショックの被害拡大は過剰結合によるものと分析する。

 過剰結合下では「正のフィードバック」が働く。これは制御工学の用語で「出力の増加が入力を増やす」こと。システム自身によって出力が逓増する。インターネットがほころびの増幅器になっているのだ。ひっかかりを感じる点もありながら、ここまでの分析は鮮やかである。

 ただし、本書全体の構成はやや難がある。セキュリティなどインターネットそのものの問題と、筆者が提唱する過剰結合の問題が入り組んでしまっているのだ。過剰結合の視点はSNSの普及でさらに重要な論点になりそうであるだけに、その点が惜しい。

つながりすぎた世界

つながりすぎた世界
ウィリアム・H・ダビドウ著
酒井泰介訳
ダイヤモンド発行
1890円(税込)