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 システム開発をめぐる契約は、年々複雑さを増している。クラウドを使ったシステム開発やアジャイル開発のプロジェクトなど、開発手法や技術の変化で契約の仕方が分かりにくい場面が増えている。開発契約に携わる法務担当者や現場担当者、弁護士などへの取材を基に、今現場が知っておくべき開発契約の知識を、「ウソ」と「ホント」で解説する。

 今回は、アジャイル開発の契約書での協力義務の明記、多段階契約における発注者のリスクについての「ウソ」と「ホント」を取り上げる。

アジャイルの契約書では協力義務を強調する

ホント

 アジャイル開発の良さを生かすには、契約書に工夫が必要だ。発注者と受注者が相互協力する義務などを記載しよう。

図1●情報処理推進機構(IPA)が公開したアジャイル開発向け契約書のひな型
図1●情報処理推進機構(IPA)が公開したアジャイル開発向け契約書のひな型
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 今年4月、情報処理推進機構(IPA)は、アジャイル開発の契約書のひな型を公開した。そこには、アジャイル開発の特性を生かすための項目が記載されている。アジャイル開発を意識した項目は大きく三つある(図1)。

 一つ目は発注者と受注者の相互協力の義務を明記してあることだ。「プロジェクト中の要求の変化を柔軟に受け入れるアジャイル開発では、ウォーターフォール型の開発よりも、発注者と受注者に緊密な関係が必要になる。こうした開発の特徴を契約書の条文として明記した」と、ひな型の策定に携わった、ブレークモア法律事務所の梅本大祐氏(弁護士)は説明する。

 二つ目は、発注者と受注者のどちらかが仕様変更を依頼した場合に、他方がそれに応じる義務があることを盛り込んだこと。仕様変更を積極的に実施することでより良いシステムを作るというアジャイル開発の特徴を反映した。

 三つ目は連絡協議会の開催頻度と開催目的を記載することである。これはウォーターフォール型の契約書でも記載されることが多いが、アジャイル開発ではその頻度が高い。そのため、プロジェクトを円滑に進めるためにも、契約書に明記することが必須といえる。