長らく経営企画部門を歩み、副社長に就任してからは営業の陣頭指揮を執る一方、成長戦略として新規ビジネスの開拓も推進してきたNTT西日本の村尾和俊・新社長。減収が続く同社の立て直しには、「新サービスの開発が重要」と言う。他社との連携を強めながら、数多くのサービスを開発していく心づもりだ。
今後の事業方針は。

最大の課題は、音声収入の減少をIP系収入の増加で補えず、毎年200億~300億円の減収が続いていること。これを早急に改善する。そのためには新サービスの開発が重要だ。経営資源の多くを投下して全力で取り組んでいく。
この6~7年間、社員には「100円玉営業」が重要だと言い続けてきた。当社の光契約は700万件以上あり、100円玉1~2枚のサービスを追加契約してもらうだけで、年間100億~200億円の増収効果がある。とはいえ、一つのサービスを大多数のユーザーに気に入ってもらえる時代ではない。だから、魅力的なサービスをいくつも提供できるよう、開発に力を入れていく。
具体的にどう強化していくのか。
他社との連携を強めてスピード感を持って提供していく。これまでのような自前主義は、もはや限界。世の中の動きは速く、利用者の嗜好も多様化している。そのスピードとニーズに合わせるには、パートナリングが大切だ。
7月1日には提案力強化に向けた「ビジネスデザイン推進室」を立ち上げた。新組織では「デザイン」というキーワードにこだわる。光回線を活用して一歩先を行く生活スタイルや行動スタイルを利用者に提案できるサービスを“デザイン”していく。テレビを手軽にスマートテレビ化できる「光BOX+」をはじめ、介護、スポーツ、健康、農業、環境/エネルギーまで様々な分野に取り組む。
料金面でも顧客のライフスタイルやビジネススタイルに合ったプランを提供する。値下げ競争からサービス競争に切り替えていきたいと考えており、家族やコミュニティーなどに合わせた料金プランを年度内に複数出す予定だ。
「光BOX+」では、「Hulu」対応など、これまでにない意気込みを感じる。
今年度に10万台の出荷台数目標を掲げているが、まずはコンテンツ拡充が優先。様々なコンテンツ所有者と貪欲に組んでいく。地方自治体やローカル局と連携して地域の文化や伝統行事などを全国に伝えていくことも考えている。
光BOX+にはプラスαの役割も期待している。例えば高齢者は簡単な操作で行政情報をテレビの大画面で確認できる。電源投入の情報を家族などに伝えれば高齢者の見守り用途にも使える。地方のスーパーマーケットと組み、高齢者や共働き世帯などの買い物支援に活用することも考えている。子会社のNTTスマートコネクトが提供する共通基盤を使えば、サーバーを自前で持たなくても簡単に参入できる。
NTTグループとしてはグローバルビジネスに注力するようだが。
グローバルビジネスは東西以外の事業会社で伸ばしていく分野。東西会社は「ユニバーサルサービス」の提供義務に加え、一定の規制もあるなか、大化けしてグローバル化なんてことはあり得ない。我々の使命は全国津々浦々のアクセス回線を提供することにあり、地域密着で多くの顧客に支えられている。アクセス回線から、グループが展開する上位サービスの手配、監視やセキュリティ対策までオールインワンの提供を目指している。