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 前回の記事で、特に海外の企業において、いわゆる「デジタルマーケティング担当者」に求められるスキルセットが、これまでと比してより幅広く、かつ深くなりつつあるということを書いた。もちろん、これは企業において「デジタルマーケティング」と呼ばれるアプローチが、当初とは大きく変わってきていることが影響している。

 企業の展開する「デジタルマーケティング」の歴史を振り返ってみると、自社運営の企業サイトやメールマガジンなどによる情報提供をメインとしているような頃ならば、担当者はこうした自社メディアを運営するスペシャリストであることが求められていた。つまり、「Webサイトの運営スキル」であり、さらにブレイクダウンすると「Web制作技術(および経験)」「(エージェンシーやベンダーなどへの)ディレクション経験」「(文章や画像などの)コンテンツ制作技術(および経験)」だったことが多かった。

 その後、Webサイトに関連するツールやテクノロジー、そしてプラットフォームが進化するにつれ、表現できるコンテンツも多様かつリッチになってきた。それに伴い「Web制作技術」や「コンテンツ制作技術」を、外部のプロフェッショナルの手に委ねる部分が増えてきた。だが、基本的に求められるスキルセットが大きく変わったわけではない。

 この頃は「デジタルマーケティング」の専門部門を置く企業もほぼ皆無に近く、基本的に「デジタルマーケティング」は「マーケティング(またはコミュニケーション)部門に属し、Webサイトの周辺技術に明るい担当者」が担当するケースが大半だった。

利益と直結した結果が求められる時代に

 だが、企業において「デジタルマーケティング」の位置付けや重要度、さらに求められる結果も大きくなってくるにつれ、「マーケティング(またはコミュニケーション)部門に属し、Webサイトの周辺技術に明るい担当者」が片手間に担当していくというやり方は徐々に変わってきた。「デジタルマーケティング」の専任担当者、あるいは専門部門を持つ企業が増えてきて、近年ではさらに「ソーシャルメディア」という新たな要素が加わり、専任担当者や専門部門は、そこもカバーされることが求められているのが現状だ。

 だが、前回の記事でも書いたように、前述したようなスキルセットだけでは「デジタルマーケティング」そのものをきちんとカバーできないという認識が、特に海外の企業を中心に生まれつつある。「デジタルマーケティング」の位置付けや重要度、そして求められる結果が大きくなるということは、言い換えればビジネス上のリターン、もっと端的に言うと、きちんと利益を生むとことが求められている。つまり「Eコマース」や「CRM」といった、ある意味「わかりやすくおカネになる」部分が強く問われてきているのだ。

 特に「デジタルマーケティング」の専門部門があり、そこをマネジメントするようなポストの場合、求められるスキルセットや経験のハードルが高くなってくる。Eコマースについての知識や実践経験、さらに結果まで問われるし、CRMについても同様だ。少なくとも、これまで求められてきた「デジタルマーケティング」のための基本的なスキルセット、そして「ソーシャルメディア」をきちんと踏まえた上で、最低EコマースないしCRMのどちらか、できれば両方ある程度高いレベルで備わっていることが要求されるようになってくる。

マーケティング本来の知識や経験がより重要に

 これらのスキルセットや経験のベースになるものを身につけるには「デジタル」の領域内だけは難しい。半ば必然的に「オフライン」での経験、あるいは「オフライン」におけるビジネスに関して、その基本的な部分に対する理解や、ある程度の実践は求められてくることになる。

 もちろん、こういった条件を全て兼ね備えるような人材は、海外でも非常に少ない。それは日本においても同様だろう。しかし、現実として「デジタルマーケティング」と呼ばれる形でくくられる中に、これらの領域は既に含まれているし、さらに言えば、これらも「ほんの一部」でしかない。

 少なくとも、こういった点を踏まえた上で組織の構築や運営を考えていくことが求められるし、今後の人材育成という部分まで視野に入れる場合は、その育成にあたって、これらのスキルセットや経験が身に付くような形で考えていくことは意識していかなくてはならない。「デジタルマーケティング」の重要性が高まれば高まるほど、問われてくるのは「マーケティング」の部分になってくるのだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。