PR

 デジタル・シネマ発祥の地として,ここまで不釣り合いな場所もないだろう。

 サンフランシスコの北,車で30分ほどの小さな街,サンラファエル。その外れに,Lucas Valley Roadと呼ばれる道がある。19世紀,この地に居を構えたJohn Lucas氏にちなんだ名前である。オークの木と黄金色に輝く草に覆われた丘を縫って伸びる,強い風にさらされた一本の山道。

 カリフォルニアによくある風景を抜けると,忽然とゲートが現れる。その先に進めば,検問所で警備員が待つ。警備員がまとった青いユニフォームと野球帽は,ごくごくありふれている――ある一点を除いて。ユニフォームの肩に目を凝らすと,Xウイング・スターファイターのイラストに,それぞれ「警備員」「消防士」「救急医療班」「救助隊」の文字が重なる。

 スカイウォーカー農場へようこそ――ここが,米Lucasfilm Ltd.の本拠地だ。

It Doesn’t Seem To Be

写真1●Skywalker Ranch<br>スカイウォーカー農場のメイン・ハウス(左)とテクニカル・ビルディング(右)(Copyright (c) Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)
写真1●Skywalker Ranch
スカイウォーカー農場のメイン・ハウス(左)とテクニカル・ビルディング(右)(Copyright (c) Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)
[画像のクリックで拡大表示]

 デジタル・シネマの総本山は,きらびやかなガラスに覆われたシリコンバレーのビルや,ロサンゼルスの一角を成す映画スタジオではない。なだらかにうねる丘陵にゆったりと抱かれた,20棟ほどの建物がそれである。納屋やフィットネス・センター,有機農園までが点在する中に,ビクトリア朝様式の3階建ての建物「メイン・ハウス」がある。STAR WARSのエピソード6,エピソード1から3までを編集した場所がここである。

 メイン・ハウスに一歩足を踏み入れても,デジタル・シネマにゆかりがある建物とは思えない。コンピュータやディスプレイは目に付かず,趣味の良い内装を施した邸宅に招かれたかのようである。坂を下った先にある「テクニカル・ビルディング」にも,ことさらに技術を強調する要素はない。

 メイン・ハウスの主は,アンティークを好むという。技術とは縁遠く見えるこの人物が,デジタル・シネマ革命の主導者だ。George Lucas。「STAR WARS」の創造主は,映画を作る技術に新たな次元をもたらした。

 Georgeが手掛けたSTAR WARSの新3部作―エピソード1から3―は,映画史上まれに見る成功で知られている。2005年7月末までに,累計で24億米ドルの興行収入を稼ぎ出した。エピソード3は現在も世界各地で上映中で,数字はさらに伸びるだろう。ただし,3本の貢献はそれだけではない。デジタル・シネマ技術の基礎を築いたのが,この3本だ。エピソード1は,大手映画会社が配給する映画として初めてデジタルで上映された。エピソード2は,すべてデジタルで撮影した最初の大手映画である。

 この物語は,3本の映画が培ったデジタル技術の進歩をたどる。Georgeらが開拓した技術とビジョンは,映画制作を塗り替えるにとどまらず,家庭のAV機器の将来像をも照らし出す。

An Industry Changing History

 すべての発端は,30年近く前にさかのぼる。デジタル・シネマの開発以前にも,Georgeとそのチームは何度も映画史を書き換えてきた。

 ハリウッドは毎年,真夏に大作映画を公開する。この流れを生み出したのが,1977年に封切られたSTAR WARSの最初の作品「エピソード4/新たなる希望」だった。