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 米Lucasfilm Ltd.の面々が,どやどやと劇場に入ってきた。同社の本拠地・スカイウォーカー農場内にある,映画館顔負けの設備・Stag Theater。席に着く人々の喧噪の中,米Texas Instruments Inc.でDLP Products,Commercial Entertainment,Business Managerを務めるDoug Darrowは,じっと主役の登場を待った。

 米THX Ltd.のDave Schnuelleに声を掛けられて以来,約半年。突貫工事だったとはいえ,試作機の出来栄えには自信がある。とりわけ映像品質の高さは,エピソード1のプロデューサー,Rick McCallumの折り紙付きだ。あとは,すべての中心にいるGeorge Lucasに認めてもらえばいい。Dougは,自社製デジタル・プロジェクタの試写を前に,はやる気持ちを抑えた。

 フィルム並みの高画質を得るために,TI社の開発チームは同社のデジタル・プロジェクタの中核部品「DMD(Digital Micromirror Device)」に手を入れた。DMDは,光源からの光をSi基板上の微小な鏡で反射・調整することで,大画面の映像を投射する。

 DMDの最大の課題は,「黒らしい黒」を表現できないことだった。「当時のDMDチップは鏡の下に光を反射しやすい金属を配置してあった。それが光を散乱し,黒を灰色っぽくしていた」(Doug)。灰色を黒に戻すため,技術者たちは光を吸収しやすい金属の層を鏡の直下に設けた。この結果,コントラスト比は,400対1から800対1へ劇的に改善する。「これでやっとGeorgeに見てもらえる」(Doug)。

 チームには,もう1つの大仕事があった。出来上がった光学系を,試写に使えるプロジェクタに仕立てなければならない。まず,フィルムのプロジェクタを前後2つに分断し,フィルム・リールを送る歯車類を収めた前側半分を取り除いた。次に,デジタル・プロジェクタの光学系と,出力5kWのXeランプを備えたフィルム・プロジェクタの光源を,調整機構を介して配置した。

 フィルム・プロジェクタの光源を利用したのは,映画業界がなじんだ技術になるべく近づけるためだった。ただしXeランプから生じる大量の熱が,おびただしい問題の火付け役になりかねない。冷却などの難題に煩わされるのを嫌ったTI社は,プロジェクタの制御や映像処理,データの格納を担う部分を,本体から分離した2つの筐体に収める。これらとプロジェクタの間は,光ファイバでつないだ。

 継ぎはぎだらけの試作機は,スカイウォーカー農場に運び込まれ,Stag Theaterの映写室にどっかりと鎮座している。そして今,George Lucasを迎えて,デジタル・プロジェクタの未来を占う試写が始まる――。

図●上:「エピソード1/ファントム・メナス」より(Copyright c Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.),下:エピ ソード1 のデジタル上映に使った,米Texas Instruments Inc. のDLPプロジェクタ。写真は劇場の映写室 で撮影したもので,右上にあるのがプロジェクタ。
図●上:「エピソード1/ファントム・メナス」より(Copyright c Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.),下:エピ ソード1 のデジタル上映に使った,米Texas Instruments Inc. のDLPプロジェクタ。写真は劇場の映写室 で撮影したもので,右上にあるのがプロジェクタ。