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 筆者の勤務地であるレディングはロンドンからに西に60km、ターミナル駅から電車で25分のところにある。レディングはIT産業に長年投資をしてきた結果、「英国のシリコンバレー」と呼ばれるほどになっている。近辺には米マイクロソフトや米オラクルの英国本社など多くのIT企業が集まっている。地元のレディング大学はITに強く、コンピュータサイエンス学科に著名な研究者が在籍している。

 こうした土地柄を背景に、筆者が在籍するインテグラリスにも優秀なエンジニアが数多く集まっている。レディングを中心に世界7カ所のセキュリティオペレーションセンターが互いに連携し、世界中の顧客にマネージドセキュリティサービスを24時間体制で提供している。

光回線の普及はこれから

セキュリティ対策に力を入れる英国の通信事業者

 英国のブロードバンド料金は日本と同じくらいだが、回線はADSL(最大24Mビット/秒)が中心。光回線の普及はこれからといったところだ。

 興味深いのは広告に関する規制である。回線速度を説明するときは、少なくとも10%のユーザーが使える速度でないといけない。例えば技術的には最大24Mビット/秒のADSLであっても、実測後に「14Mビット/秒」などと書かれる。さらに「大多数のユーザーはこの数値に届かない可能性がある」ことも併記する必要がある。

 インターネットの利用ではヘビーユーザーの突出した利用を制限する「Fair Usage Policy」がある。筆者が利用するプロバイダーは、30Mビット/秒の回線だと午前10時から午後1時までのダウンロードは7Gバイト、午後4時から午後9時までは3.5Gバイトを上限としている。それを超えると5時間の帯域制限を課される。

 P2Pソフトも厳しく制限されていて、通信量とは別のルールで帯域が制限される。最近では高等法院の判決を受け、ほとんどのプロバイダーがファイル共有に使われる違法サイトへのアクセスを遮断するという動きがあった。

 通信事業者によるセキュリティ対策が充実しているのも英国の特徴だ。セキュリティ対策ソフト、有害サイトのフィルタリングソフトなどは多くのプロバイダーが無償提供している。顧客に提供する無線ブロードバンドルーターはWPAによる暗号化を設定して、すぐに使える状態で出荷している。

 ネットワーク側のセキュリティ対策にも積極的だ。筆者が自宅にハニーポットを設置した際、Windows系のマルウエアを捕獲できなかった。原因を調べると、プロバイダーが他社網から自社網に入ってくるトラフィックを監視して、マルウエアをブロックしていた。加入者からのトラフィックもフィルタリングの対象として、マルウエアの感染拡大を防いでいた。

中島 章博(なかじま あきひろ)
NTTコミュニケーションズに入社以来、セキュリティ業務に従事している。2003年にセキュリティオペレーションセンターの設立に参画。侵入検知と脆弱性診断のサービスに従事した後、2010年10月から独インテグラリスの英国支社に赴任。セキュリティ研究と次世代ログ分析のシステム開発を担当する。ロンドン五輪では7月29日のサッカー、日本対モロッコ戦を心待ちにしている。