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 日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議する反日デモが中国各地で発生している問題の影響が日系IT業界にも及んでいる。日経コンピュータの調べによれば、一部の日系IT企業が現地社員の出張・出社規制を余儀なくされている。当初は大手スーパーや電機メーカーなど一般消費者向けの日系企業が被害を受けていたが、デモの拡大により、企業向けビジネスが中心の大手IT企業にも影響が広がった格好だ。

 NTTデータは2012年9月18日午後、中国への出張を控えるように通達。テレビ会議など別の手段に切り替えるように指示した。中国への出張者には「外出を控える」「タクシーには一人で乗らない」といった注意を促した。

 野村総合研究所(NRI)は18日、上海と北京にある一部の拠点で働く社員を自宅待機にした。日立製作所のSI子会社で上海の日立信息系統(上海)も、社員を自宅待機とした。「19日以降の出社については状況次第で判断する」(日立製作所)という。この日は満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日に当たるため、各社の現地拠点は反日行動が一段と高まる恐れがあると判断したようだ。

 NECは同日、広州にある現地拠点の判断で一部社員を自宅待機とした。ITホールディングスは日本人社員の自宅待機を認めている。子会社のTISが運用する天津のデータセンターは通常通り稼働しているという。コールセンター事業を営むトランスコスモスは、特別な場合を除き中国への出張を控える通達を出した。

問い合わせ窓口への電話攻撃も

 ある大手メーカーの現地問い合わせ窓口には、2万5000回の電話が掛かってきた。通常時の約500倍以上に相当するという。この窓口の電話はメーカーが通話料を負担しており、「日系企業のコスト増を狙った攻撃」(担当者)とみている。「電話に出るとすぐに切れる。何者かが電話を自動でかけるプログラムを作っているのだろう」(同)。このメーカーでは電話窓口を一時閉鎖するなどの影響を受けた。

 一方、特別な対応を取らない企業もある。富士通は本社から現地に自宅待機などの通達を出してはいない。「外務省の注意喚起に従うようにしている。現地子会社など各拠点の判断に任せている」(広報)という。

 反日デモは北京の日本大使館周辺や上海の日本総領事館付近など100都市以上に広がったもよう。1972年の日中国交正常化以来40年ぶりの最大規模とみられる。

 日系IT企業にとって、中国はオフショア開発などの最有力「製造拠点」であり、有望な「成長市場」でもある。特に日系IT企業のオフショア拠点は、そのほとんどが中国に集中している。反日デモは、日系IT企業が開発拠点を中国に集中させるリスクを改めて浮き彫りにしたと言える。