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 前回は課外教育や大会など、学校の外での取り組みを見てきたが、実は学校の中でも、教育にプログラミングを取り入れようとする動きが出てきた。

 広尾学園中学校・高等学校は、長期休暇の課外授業としてプログラミングを取り入れた。同校の中高生150人が3日間でiPhoneアプリ開発を学ぶ。金子暁教諭は「現行では、スキーや林間学校と同じ課外授業の位置づけ」と話す。興味を持ちそうなことを授業の枠を超えて学ばせるのが狙いだ。

 2011年度から、アップルのタブレット端末「iPad」を入学時に学生に購入させ、授業に取り入れている。松尾廣茂副校長は「人の考えたアプリを使いこなすのも大切だが、アプリを自分で作り出せる人材を育成したい」と話す。

 品川女子学院は2012年度からプレゼンテーション能力教育の一環として、iPhoneアプリ開発を取り入れる(写真)。高校1年生の「情報」の授業で、3学期から始める。

写真●品川女子学院で開かれたiPhoneアプリ講座
スマホなど身近な端末で自分が考えたアイデアが具現化する喜びを体感する

 以前から環境問題などをテーマに選んで、インターネットで調べた結果をPowerPointで発表してもらう、といった内容を授業に取り入れていた。この授業形式にプログラミングを取り入れる。

 簡単な時計アプリを実際に作り、プログラミングを実践。さらに、自分でどんなアプリを作りたいかを企画し、発表させる。

 情報科の酒井春名主任は「時間の制約があり、自分で企画したアプリを作れるレベルの技術を授業で教えるのは困難。ただ、ソフト開発技術は身に付けておいて損しない。何か思いついたときに、『自分で作れる』ことを自覚してもらうのが狙い」と話す。

 先行して取り組んだ特別授業では、ツボの効能を伝えるアプリなど受験生向けアプリを開発した。プログラミングに関心を持ってもらうきっかけ作りが狙いだ。

教員もアプリ開発を楽しむ

 生徒にプログラミングへの関心を持たせるには、教員自身がその楽しさを実感し、生徒に伝えられなければならない。創造的な授業を行えるかどうかが鍵を握る。

 この点で参考になるのは、埼玉県内の越谷総合技術高等学校など工業高校9校の取り組みだ。いずれもIT人材の養成を主眼とする情報技術科や情報処理科を設置している。

 各校は2012年度に、授業で米グーグルのOSで動くアプリ開発の教育を始めた。その準備として、2011年9月から教員14人に対する研修を進めてきた。「工業高校の教員の多くはプログラミングの基礎知識を持つ。さらに最新の技術に触れて楽しむ姿勢が大事」と、県内の教員の研修を担う埼玉県立総合教育センターの清水雅己主任指導主事は話す。教員がアプリ開発の面白さを理解すれば、授業はおのずと創造的になる。

 もう一つ大切なのは、授業で生徒が挫折しがちなアプリ開発時に発生するエラーへの対処だ。教員向け研修では、エラーをどう解決すればよいかに重きを置く。

 授業では、一つアプリを開発した後で、わざとエラーを出すプログラムを示して、どう対処すればよいのかを考えさせる。教員が手助けすることで、生徒のやる気をそがずに創造性を高める。

 清水主事は「無数の情報から選んで分かりやすく伝えるのが教員の役割。特にITの教育では大切になる」と話す。「スマホやタブレット端末は今後、産業分野でも普及が進む。画面を設計できるスキルを習得していれば活躍の場が広がる。工業学校の強みにしたい」と意気込む。

 スマホ世代を次世代IT人材としてどう育てるかは、日本企業の成長力、ひいては国家の競争力すら左右する。日々進化する技術を使いこなし、優れたスキルとセンスで企業や社会を元気にするIT人材が活躍する─。一連の取り組みが奏功すれば、こんな日が来るのも夢ではない。