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 「私は将来を楽観視している」。米IBMのバージニア・ロメッティ社長兼CEO(最高経営責任者)は9月11日、都内で開催した顧客向けのイベントで約300人の日本企業トップを前に熱弁を振るった。ロメッティCEOが日本で公の場に出るのは、今年1月の就任後初めてだ。

 ロメッティCEOは「コンピューティングの世界が3番目の時代に入ろうとしている」という歴史観を繰り返し語った。IT業界に新たなテクノロジー史観を持ち込んで、いち早く対応して競合をリードしたいというIBMの強い意志が透けて見える。

 第1の時代は19世紀後半から1950年代までの作表機(タブレーター)。第2は現在まで続くプログラム可能なシステムの時代だ。「PCやスマートフォンは、小型化しただけ」(ロメッティCEO)で新時代を切り開いたわけではないとした。

 今後訪れる第3の時代では、「システムが自ら学習し、データの意味を解釈できるようになる」とロメッティCEOは定義。大量なデータを様々な情報源から収集して統合し、瞬時に分析するシステムを「コグニティブ・コンピューティング・システム」と呼ぶ。いわゆる「ビッグデータ」である。

 先行事例として紹介したのが、質問応答システムの「Watson」。医療に適用すれば膨大な最新医療情報を学習し、患者ごとに最適な治療方針を提案できるという。

 こうした新たなテクノロジーが、企業情報システムなどの「バックエンド」から「フロントエンド」に登場すると「生活や仕事のスタイルが一変する」と強調した。IBMはスーパーコンピュータの性能やデータ分析技術などで、業界で優位に立っている。この自信が冒頭の「楽観」の背景にあり、日本の顧客の新たな“お財布”に照準を合わせたと見ることができる。

写真●約300人の聴衆に向けて熱弁を振るった、米IBMのバージニア・ロメッティ社長兼CEO(最高経営責任者)
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 同じイベントに登壇した三菱東京UFJ銀行の平野信行頭取も「我々も考えるコンピュータの段階に移ろうとしている」と言う。「既にリスク管理で、膨大なデータを日々処理している。次の課題はフロント。ITがバンキングの世界を変える」と期待を込めた。住宅ローンや運用商品の売り込みを効率化できると見ている。

 ロメッティCEOは「新技術でリーダーの役割も変わる」と変革の必要性を強調し、パートナーにIBMを選んでほしいと訴えた。

 顧客企業もロメッティCEOの歴史観に呼応し始めた。日本のベンダーが対抗するには、より強いメッセージを放って顧客を振り向かせる必要がある。