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 消費者ニーズの多様化に対応しようとすると、製品の機能やデザインの種類が増える一方、個々の製品の需要は少なくなる。個々の製品の生産量が少ない多品種少量生産にならざるを得ない。

 ところが、多くの工場には同じ製品を大量に作り続ける少品種多量生産に向くベルトコンベヤーによるライン生産がまだ残っている。ライン生産で多品種少量生産を行おうとすると、生産する製品の切り替えが1日に何回も発生して組み立てが止まるため、生産性が悪くなる。

 このライン生産のデメリットを解消しようとするのがセル生産だ。ライン生産では完成までの組み立て作業を多数の作業者で分担するが、セル生産ではベルトコンベヤーを撤去し、手作りの工夫満載の小さな作業台(セル)で、作業者一人で全てを組み立てる(複数人で組み立てる形態もある)。

 図1のライン生産では3人が1日かけて製品Xを300台作る。一方、セル生産では一人ひとりがXとYとZを100台ずつ作ることができる。しかし、セル生産に切り替えると新たに部品供給の課題が発生する。ライン生産に比べ、セル生産は1人の作業者が組み付ける部品点数が数倍に増えることだ。

図1●ライン生産とセル生産
図1●ライン生産とセル生産
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 そうなるとセルへの部品供給の作業はラインに部品を供給していた時よりも集める部品の種類が増え(3点→9点)、セルのレイアウト配置によっては届け先の範囲も広がる。その結果、部品供給担当者の工数が増えてしまう。こんな時、現場改善の対象範囲を少し広げてみると、また違った展開が見られる。そこで次にH社のケースを紹介する。

組み立ては現場改善、部品供給はIT

 H社は大手家電メーカーの家電量販品の受託製造を行っている。ライン生産からセル生産に移行して2年たち、生産性が以前より50%以上アップし、製品在庫も徐々に減ってきた。その一方、セルへの部品の供給に課題が見えてきた。

 部品は組み立て計画に連動して組み立て前日に部品業者から納品される。納品された部品を受け入れると、すぐに生産現場に出庫し、セル生産が行われているフロアのすぐ近くに置く。続いて部品供給の担当者がセル生産の進捗を見ながら部品を供給する。組み立て計画に連動して最小限の在庫しか持たないという思想の下、部品納品後すぐに生産現場に払い出すことで、部品在庫として管理するのではなく仕掛かり在庫として管理していた。