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 全国各地で路線バスの収益が悪化している。特に公営バスは軒並み、累積赤字に悩んでいる。そのなかでも飛びぬけて赤字額が大きいのが大阪市営バスである。単年度の赤字を累積させ、2011年度末でなんと600億円超もの累積欠損を計上している。

 現在の市営バスの路線は全部で139路線ある。このうち黒字は3路線のみだ。人口密度の高いところを走っているのにあまりにもコストが高い。そのため多くの路線が赤字になっている。赤字の原因は、第1にバスの運転手の賃金が民間平均の約4割も高いうえに人員が過剰なこと。第2に他都市のような民間バスへの路線の譲渡や業務委託がほとんど進んでいないこと。第3にお客がほとんど乗らない路線がたくさん残されていることである。

 さらに市内路線をほぼ独占しているという問題もある。東京の場合、主要駅に乗り入れるバスの9割弱が民間バスだ。名古屋でも35%が民間バスである。ところが大阪ではわずか9%しか民間バスが入っていない。空港バスですら大阪駅前の市バスのターミナルに乗り入れできない。電車を降りた人が大きな荷物を持って近くのホテルの前の空港バス乗り場まで何分も歩かなければいけないという風景は、とても先進国のものとは思えず異常である。

4割を民間譲渡

 赤字続きのバス事業には、大阪市役所の一般会計からの補助金、そして黒字の地下鉄会計からの繰入金で毎年50億円以上が投じられてきた。

 今回、府市統合本部のプロジェクトチームで改善策を考えた。すると給与を4割削減して民間並みに正常化したうえで運転手の勤務日数を9%増やすなどの工夫をすれば、全体の4割強、乗客数で約8割に相当する58路線は黒字化する可能性があるとわかった。これらについては営業所の単位で民間のバス会社に事業を譲渡していく方針である。

 残りの81路線は、民営化で合理化しても赤字が出る可能性があるが、全廃すると住民生活に影響が出かねない路線だ。これら81路線は事業性がないので交通局ではなく、区役所に地域の公共の足の問題として対策を考えてもらう。区バスを走らせる、福祉タクシーに売るなど方法は自由だ。

 ちなみにこれら81路線は41路線に集約すると沿線の99%のエリアをカバーできることもわかった。現実には81路線のまま区役所に対策を考えてもらうのではなく、この41路線をどうするか考えればよい。もっと具体的に精査したところ、このうち20路線は利用者が特に少なく、バスではなく福祉タクシーへの切り替えなどが妥当と思われる。いずれもしてもこうした改革案が実現すると、今後、必要となる補助金は年間6億円程度に抑えられる見込みである。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山信一
慶應義塾大学総合政策学部教授。運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。大阪府・市特別顧問、新潟市都市政策研究所長も務める。専門は経営改革、地域経営。2012年9月に『公共経営の再構築 ~大阪から日本を変える』を発刊。ほかに『自治体改革の突破口』、『行政の経営分析―大阪市の挑戦』、『行政の解体と再生』、『大阪維新―橋下改革が日本を変える』など編著書多数。